HPCスタッフコラム

2017.08.03

女子選手におけるレジスタンストレーニングの継続性を高めるための戦略

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女性アスリートについて継続的にレジスタンストレーニングを行うにあたって性差の問題を13の項目に分けて解説しています。中には男性に共通する項目もあり、アスリートに継続的にレジスタンストレーニングを行ってもらうための戦略に興味のある方は是非ご一読を!
文字数:11,032文字|目安閲読時間:18~27分

Volume 12, Number 8, 2005

女子選手におけるレジスタンストレーニングの継続性を高めるための戦略
Strategies for Improving Resistance Training Adherence in Female Athletes

Donald V. Fischer, MSPT、ATC、CSCS、セントベネディクト大学、ミネソタ州セントジョーゼフ

私はディビジョンⅢに所属する小さな女子大学のストレングス&コンディショニング(S&C)コーチとして採用されたときに、アスレティック部門のディレクターから、どうすれば女子選手のニーズに特化したプログラムを作成できるか、という難問を与えられた。私はまず、男女間の解剖学的および生理学的差異を明確にし、そして、これらの差異が絶対的および相対的筋力(32)、パワー出力(26)および障害を受けやすい女子選手の素因(35)にどのように影響を与えるかということを特定することから始めた。しかしこの調査方針は有益ではなかった。解剖学的および生理学的な性差が存在するにもかかわらず、トレーニング方法は男女ともに同じであったためである(12)。実際、こうした同じトレーニング方法によって、筋力と除脂肪体重の増加、体脂肪率の減少、および機能的能力の改善は、男女を問わず等しく到達可能であることが示されている(12)。

しかし、ディビジョンⅢの女子選手の指導を続けるうちに、このグループには特有の何かがあることが極めて明らかになってきた。女子選手は男子選手と同じくらい熱心に練習や競技をこなしているようだが、全体的に見て、男性選手ほど頻繁にウェイトトレーニングを行わず、トレーニングセッションの時間も短いようであった。さらに、女子選手がウェイトトレーニングを行う場合、一般的に、男子選手と同等の努力をしたり、男子選手と同等の忍耐力を持っているようには見えなかった。ウェイトトレーニングの頻度とセッションの時間における性差については、ディビジョンⅢに所属する選手を対象としたPoissらの研究で指摘されている(31)。この現実にみられる行動は、女性によるストレングスとパワーの発揮は、スポーツ環境の中では比較的社会に受け入れられてきた一方、高強度のレジスタンストレーニングのパフォーマンスでは、同じ特性を発揮することが未だ社会的に認知されていない、と解釈できる。

本稿の目的は、レジスタンストレーニングにおける性差の問題についてのレジスタンストレーニング専門職の認識を促すこと、そして女子選手のレジスタンストレーニングの継続性を高める戦略を提示することである。これらの戦略は、性差、エクササイズの継続、および社会的認知理論の分野における研究(2)に基づくものである。この理論は、大学生の将来の積極的な身体活動の予測における有用性が示されている理論(29)であり、アメリカスポーツ医学会が、行動様式の変化を理解する際に使用することを推奨している理論である(1)。ここに提示された戦略の中には女性と同様に男性にも適用可能なものもあるが、レジスタンストレーニングが行われる心理社会的環境から、女性に特異的なものが多い。

レジスタンストレーニングについての性差について述べることは、ステレオタイプを助長していると解釈されるかもしれないが、これは本稿の意図するところではない。「それぞれの性における変動性は性差を越える」ということを頭に入れておくことが重要である(4)。確かに、ウェイトトレーニングへの参加を重視し、その行動による身体的および社会的に有意義な成果を期待している女子選手もいる。しかし、スポーツパフォーマンスの改善をもたらすウェイトトレーニングの価値を認めながらも、社会的成果がよくないと認知されているために参加したがらない女子選手もまた存在する。従って、女子選手におけるエクササイズへの継続性を高めるためには、「性別は性差を生む。そして性差の問題を理解するためには、生物学上の性や単純に2分化した性差という見方を越えて、心理社会的問題として捉えなければならない」と認識することが重要である(15)。男性や女性をすべて一括に論じることはできないが、性差がレジスタンストレーニング活動にどのように影響するかという認識を促すことは重要である。性差は我々のスポーツ文化にとても深く根を下ろしているため、無視することはできない(15)。

女子選手におけるエクササイズの継続性を高めるための13の戦略

1. 選手と前向きな人間関係を築く。
女性は、人間関係により大きな価値をおく傾向があり、そして、人間関係が最も重要視されるネットワークとして世界を見ている傾向がある(19)。こうした人間関係を維持、さらには強化することは、女性に対して非常に強い動機づけの要因になる(19)。従って、レジスタンストレーニング専門職が人間関係を重視することは女子選手を指導するうえで重要となる。このためには、例えば、廊下やフィットネス施設の外で女子選手と挨拶を交わすために少々時間をかけたり、その選手たちにファーストネームで呼びかけるとよいだろう。プロフェッショナルとしての境界をわきまえつつ、表面的なレベルを越えて女子選手を知る努力をすることも重要である。レジスタンストレーニング専門職がエクササイズ以外の話題についても話し、誕生日などの特別な出来事に適切な注意を払うことによって、人間関係は社会的に強化される。そうすると、選手は人間関係をレジスタンストレーニング・プログラムの一部とみなすようになり、プログラムの継続性が向上するだろう。

2. 選手のレジスタンストレーニング歴とそれに関する自信について知る。
選手が自分の能力に対して自信を得る最も強力な方法は、熟達経験(あるタスクにおいて成功した経験)を通じてである。なぜなら、それが個人の能力の直接的な証拠となるからである(3)。ディビジョンⅢに属する女子選手は、男子選手と比べてレジスタンストレーニング経験がかなり少ない状態で大学に入る傾向がある(11)。社会的認知理論(2,3)によると、こういった女子選手は、レジスタンストレーニング・エクササイズを行う自分の能力に、男子選手ほど自信を示さない。このことは、ディビジョンⅢに属する学生選手とレジスタンストレーニングの継続性に関する研究(未発表)において確認されている(11)。女子選手は、ベンチプレス(p < 0.01)、スクワット(p < 0.01)、およびパワークリーン(p < 0.05)の1RMを正しいテクニックで行えるという自信が、同じディビジョンⅢの大学に所属する男子選手に比べて有意に少なかった。これは、男子の学生選手はレジスタンストレーニングに対する自分の能力に対する自信が有意に(p < 0.001)高いということを示したPoissらの研究結果と一致している(31)。自信は常に身体活動の予測因子である(7)ため、この研究結果は重要である。従って、女子選手のエクササイズ歴を知ることで、適切なプログラムをデザインし、継続性向上の可能性を判断できるであろう。

3. 選手の認識、期待、および目標を知る。
ディビジョンⅢに属する多くの女子選手が、レジスタンストレーニングは男性的な活動であると感じている(11)。「ディビジョンⅢに所属する複数の大学の選手におけるレジスタンストレーニングの継続性について」という我々の調査では、女子選手に対して、レジスタンストレーニングは男性的な活動か、あるいは女性的な活動かを評価してもらった。50 名の回答者のうち、16名がレジスタンストレーニングが男性的な活動であると答え、女性的な活動であると答えたのは4名であった(11)。男女差のない作業より、男性的と認識されている作業のほうが自信における性差が生じやすいとしたLennyらの研究結果(24)を考慮すると、この活動が男性的と認識されていることは特に重要である。前に言及したように、自信は身体活動予測のパラメーターである(8)。この主張は、レジスタンストレーニングの知識と能力について高い自信を示した選手は、より規則的にトレーニング活動に取り組みやすいことを見出したPoissらの研究(31)によって裏づけられている。

また、レジスタンストレーニング専門職は、女子選手がレジスタンストレーニングの体験から何を望んでいるかも学ばねばならない。これはおそらく、一部の生理学的能力(より速く走る、より高く跳ぶなど)の向上などであろう。しかし、社会的な交流(13,17,18,37)、自尊心の確立(36)、身体イメージの改善(18,22,36)もまた、女性がエクササイズを行う重要な理由である。選手の目標のすべてを認識し、可能かつ必要ならば、レジスタンストレーニングプログラムにおいてその目標に取り組むことが重要である。さらに、選手が期待していることを理解しなければならない。また、時間、エネルギー、筋肉痛といった意味において、選手がプログラムに参加する代償をどんなものと考えているかについて知らなければならない。選手がプログラムに参加することでどんな利益を得られると考えているか、そしていつ頃その利益を得られると考えているかを判断しなければならない。

最後に、その選手がレジスタンストレーニング・プログラムを全体のトレーニングプログラムに対してどのくらい重要と認識しているかを知らなければならない。Poissら(31)は、男子選手は女子選手と比べて、レジスタンストレーニングは自分のトレーニングの重要な一部であるとみなす傾向が有意に高かったことを示した。このことが重要な理由は、認知されているスポーツ活動の価値が、参加するか否かの選択や発揮する努力に大きく影響するためである(2,10)。

4. 選手を教育する。
選手のエクササイズ歴、期待、および目標がわかったら、どのようなエクササイズプログラムをつくればこれらの問題に対処できるかについて選手を教育することが重要である。レジスタンストレーニング専門職は、そのプログラムによる選手の安全性と、成功の可能性を特に検討する。また選手が、プログラムの強度、筋肉痛の可能性、身体的および生理学的変化の可能性、そしてこれらの変化が起こる時期などの、プログラムの過程と結果に関する適切な予想を立てるのを補助することも重要である。多くの女性が、ごつごつした筋肉がついてしまうことへの嫌悪感が原因でレジスタンストレーニングを避けるため、身体的な変化は特に重要である(12)。ディビジョンⅢ所属の選手を対象とした我々の研究において、筋サイズの増加が予測された場合、レジスタンストレーニングプログラムを行う女子選手の能力に対する自信は、男子選手よりも有意に低かった(p < 0.01()11)。従って、選手の声に耳を傾け、教育するこのプロセスは、動機づけの要因を判定し、選手の恐れに対処し、適切な予測を立てることで、継続性を高めることに役立つ(1)。

また、レジスタンストレーニング専門職は、適切な身体イメージ、性別によるレジスタンストレーニングの適性、トレーニングプログラム全体におけるレジスタンストレーニングの重要性に関する問題について、その女子選手の考えと信念をつくり直すことについて、選手を教育し支援する立場にある。直接的な教育は、自分が他人からどう判断されるか、自分自身をどう判断するか、自分の能力をどのくらい信じているかについて、選手の考え方を変えさせるひとつの方法である(2,4)。この分野の教育はまた、レジスタンストレーニング専門職自身がこうした望ましい姿を示すこと、また正のフィードバックを通じてレジスタンストレーニングの性別による適性を強化することによっても行うことができる(2,4)。

5. トレーニングを続けるうえでの制約と、続けられないことに対して考えられる理由を判定する。
どうすればプログラムが利用しやすくなるかを選手に尋ねる。頻度と期間について、どれくらいの時間をレジスタンストレーニングプログラムに使いたいかを確認する必要がある。選手がトレーニングに時間を割く可能性や意思を過大評価することは、結局選手の継続性を損なう結果へとつながってしまう。プログラムの継続性を高めるためには、選手が使える時間と時間管理の技術をやや少なく見積もるほうが望ましい。定期的なエクササイズのパターンが確立され、選手の自信が高まった段階で、必要に応じてトレーニングに使う時間を増やせばよい。

学業と試験(27,28)、傷害または病気(27)、傷害への恐怖(1)、悪天候(27)、自発性の低さ20,21,28)、ある活動を行う能力に自信がないこと(28,33)など、継続できないことに対して考えられる理由を選手に特定させることは重要である。エクササイズプログラムを継続しない人は、エクササイズに対する障害を克服する方法をあまり試みないという報告が示されている(33)。考えられる理由が特定できれば、エクササイズの継続が困難となる場合があること、また多少継続できない場合があっても止むを得ないことが理解できる。ただし、それはまた、エクササイズに対する障害に直面した場合でも、どうすれば続けられるかを話し合うチャンスでもある。こうすることにより、選手は、自分自身の時間管理のテクニックと、エクササイズに対する様々な障害を克服し目標を達成する能力への自信を確立するようになる。

6. 適切な目標設定をする。
社会的認知理論では、すべての行動には目標がある(2)。しかしその目標は、その人にとって価値あるものでなければならないし、また、やる気を起こさせる程度に到達可能であると思えるものでなければならない(2)。従って、レジスタンストレーニングプログラムの過程と成果の両方を確認できるような、現実的で数量化が可能な短期および長期目標を設定することは重要である。女子選手は、過程(ウェイトトレーニング)そのものに対して自発的に価値を見出すことが少ないと考えられるため、ウェイトトレーニングの目標の達成と、もっと価値のある最終的な目標(スポーツパフォーマンスの改善)の達成との関係性を強化しなければならない。目標が明確になり、さらにその目標を達成するためにこのプログラムがどのような助けとなるかについての教育を受けていれば、目標を達成する自信がどのくらいあるか、尋ねることが重要である。認識している自信が低いならば、前に立ち返って、選手が認識している障害を再び特定し、それらの障害を最小にするための計画を立てる。

7. プログラムの開始および進行を適切に行う。
当たり前のように見えるかもしれないが、ここには強化の余地がある。前述したように、多くの女子選手は大学入学前のレジスタンストレーニング経験が男子選手より少ない(11)。レジスタンストレーニングのスキルを習得する機会が相対的に不足しているため、女性の自信は低い傾向がある(2,3)。必要に応じてやりがいのあるプログラムを与えると、成功する機会が得られ、またそれがこの分野における自信につながる。こうして自信が深まればエクササイズを継続しやすくなる(3)。エクササイズ関連雑誌やレジスタンストレーニング専門職による助言も、選手の進歩とスキルの熟達に関する意識向上に役立つ。

8. 制約のある選手の助けとなるプログラムを作成する。
エクササイズの障害として最もよく知られているものは、一貫して使える時間がないことである(8,28)。従って、エクササイズセッションの長さに柔軟性を持たせることを、プログラムデザインに組み込まなければならない。多関節リフトを中心としたプログラムを作成し、適切なときにコンパウンド、あるいはスーパーセットを導入する。多関節リフトの量を選手が比較的短時間(すなわち20 ~30分)に完了することが可能なレベルに維持する。そして、時間に余裕があれば多関節または単関節のエクササイズを任意で行わせる。また、一貫して使える時間がないため、トレーニングのパートナーがいない場合がある。従って、マシーンや安全なリフティングのオプションで構成される、代替プログラムを用意することも重要である。このタイプのプログラム作成は理想的であるとは言えないかもしれない。しかし、障害が原因で選手がリフティングをしないよりは望ましい。

9. ウェイトルームでのストレングストレーニングの代案をつくる。
一部の女子選手にとってレジスタンストレーニングは男性的な活動(11)であり、この男性的であるという認識が自信(24)、さらにはトレーニングへの参加と適切なレベルの努力(2,3)を阻む大きな障害となっている。従って、メディシンボール投げ、レジスタンスバンドでのエクササイズ、プライオメトリックジャンプ、アジリティドリル、レジスティッドラン、その他あらゆるエクササイズを中心としたプログラムを組めば、一部の女子選手にとって魅力的なレジスタンストレーニング法を提示することになる。スポーツ特有の動作により近く、また一般的に外部負荷をあまり用いないレジスタンストレーニングの代替法を提供することで、ウェイトトレーニングに対する社会的な壁は低くなる。理想を言えば、レジスタンストレーニング・プログラムには、伝統的なウェイトルームでのエクササイズとプライオメトリックエクササイズの両方を取り入れるべきである(12)が、運動パフォーマンスの獲得と筋のコーディネーションの改善は、プライオメトリックトレーニングのみを実施した女子選手においても確認されている(6)。繰り返すが理想的とは言えない。しかし女子選手がプライオメトリックエクササイズと他の「代替」トレーニングのみを行うことは、社会的な障害と認知されているものが原因でレジスタンストレーニングを行わないよりも望ましいのである。

10. グループのエクササイズセッションをつくって、レジスタンストレーニングの観察学習を行わせる。
こうした関係の維持と強化は、女性にとって強い動機づけの要因である(19)。従って、女性グループで(特にチームメイトと一緒に)レジスタンストレーニングを行うエクササイズセッションをつくると、エクササイズを継続しやすくなる。グループ環境をつくることによって、エクササイズプログラムの継続は、ストレングスやプログラムの機能面での成果につながるだけでなく、人間関係を育成することにもなる。さらにこの環境によって、レジスタンストレーニング経験の多い女子選手が、経験の少ない選手のモデルとなることができる。その選手と同じような人間をモデルとすることは、自信を確立させ、エクササイズへ参加させやすくする強力な方法である(3)。

このほかに、同性のグループでのエクササイズセッションの重要性を裏づける報告が、Taylorら(34)によって提示されている。この研究グループは、ストレスに対する主要な行動反応は男女間で異なると示唆した。「flight or fight(闘争か逃走か)」反応(5)が男性の心理学的および行動学的反応の両方を説明しているのに対し、Taylor ら(34)は、女性の行動学的反応には、「tend and befriend(子どもなどの世話をしたり、友達や仲間をつくる)」というパターンを取るという特徴があることを示唆している。Taylorら(34)によると、ストレスを受けているときの協力パターンには性差が存在することを強く示唆する証拠がある。こうしたパターンには、女性が支援関係をつくることでストレスを減らしたり、それに対処することなどがある。この「tend and befriend」理論を、エクササイズによって引き起こされたストレスに対する女子選手の反応に当てはめると、同性でのグループエクササイズが、レジスタンストレーニングというストレスに対処する選手を支援するうえで必要な社会的サポートとなると考えられる。これによりレジスタンストレーニングがより楽しくなり、継続性も高まるであろう。

11. ストレングスと機能的能力を再評価し、進度に対して賞賛を与える。
レジスタンストレーニングプログラムのデザインと実施において、定期的に最大ストレングステストを行うことは重要であり、選手は自分の進度を確認できる。しかし、レジスタンストレーニング専門職は、こうした測定法を女子選手の強化法の中心として取り入れるのは避けたほうがよい。女子選手の中には、自身の筋力を高める意思とその能力の両方を示す者もいるだろうが、女性らしさを維持することへの社会的なプレッシャーは非常に強い。繰り返すが、多くの女子選手はレジスタンストレーニングを女性的でないと考えており(11)、女子選手も普通の女性と同様に、慣習に従うべきというプレッシャーを受けやすい(14)。このため、ストレングスとパワーを発揮する能力に対する自信と、その能力を発揮することに対する認知された社会的影響との間に葛藤が生じる(3)。その結果、ストレングステストに参加しない、またはそのテストで発揮すべき努力をしないという現象が起こりかねない。ジャンプまたはメディシンボール投げなどの機能テストのほうが、選手の進度をテストするよりよい場合がある。なぜならこれらの活動は、女子選手が高い価値をおく実際のスポーツ活動に似ているからである。さらに、機能テストで使用する外部負荷は、伝統的なストレングステストで使用するものより一般的に少ないため、それほど男性的とはみなされない。どのような様式のテストを選ぶのであれ、選手が自分の努力の結果を正しく評価し、さらに、向上することに価値を見出すことで、プログラムを継続しやすくすることが重要である(2,10)。

賞賛の方法も、エクササイズの継続性を高めるうえで重要である(1)。誰が最も高い重量を挙上したのかを示す「リーダーボード」がウェイトルームに掲示されているのを見ることはよくある。しかし、この方法は女子選手に対しては注意が必要だ。我々の調査(ディビジョンⅢに所属する複数大学の選手におけるレジスタンストレーニングの継続性について)では、ストレングステスト(p < 0.001)および機能テスト(p < 0.001)の結果が発表された場合、1週間に2回以上のレジスタンストレーニングを行う能力に対する女子選手の自信は、男子選手に比べて有意に低かった(11)。ただし、エクササイズの継続を通じてチームへの貢献を強調するようなリーダーボードを使用するほうがよく、モチベーションを高められ
る場合もある。

12. 計画的および非計画的なフィードバックシステムをつくる。
これは双方向のフィードバックシステムとするべきである。理想的には、1対1のミーティングを定期的に行い、そこでレジスタンストレーニング専門職が選手を賞賛、激励、教育できるとよい。同時に、選手からのフィードバックを行えるようにし、レジスタンストレーニング専門職からの支援を得られるようにする。この種のフィードバックは、認知された身体的および社会的成果、プログラムの利便性と柔軟性、プログラムの社会的なサポートやプログラムの楽しさ、音楽や室内温度といった環境要因に関連した事項とする。また、タスクのパフォーマンスに特化したフィードバックも重要である。その理由は、こうしたフィードバックによって、本質的に男性的と認識されている活動をする女性の自信が増加することが示されているからである(7,30)。この双方向のフィードバックプロセスに携わることによって、レジスタンストレーニング専門職は、選手の努力の程度を認識することができ、また、規則的なレジスタンストレーニングプログラムを行うことに選手が賛成しているか、反対しているかを判断することができる。それを知ることで、レジスタンストレーニング専門職は、プログラムの調整ができ、また、興味のある分野に取り組めるよう、そして選手の自信を高められるよう、指導方法を変えていくことができる。継続または障害の克服を目的とした言葉による説得または激励は、自信を回復させることが示されており、特に選手が激励を現実的なものと受け止めている場合は効果が高い(3)。

13. レジスタンストレーニングを継続しやすいエクササイズ環境をつくる。
継続性を高めるためにレジスタンストレーニング専門職ができる最も重要なことは、エクササイズを楽しくすることである(1,25,28,38)。選手がどれだけ楽しんでできるかを決定するものとして、エクササイズの種類と強度が大部分を占めると考えられるが、インストラクターの知識(22,25,39)、指導の有効性(23,39)、集中度(23,39)、参加者個人に払われる注意の程度(39)といった要因が、楽しめるエクササイズ経験を生み出すことにおいて特に重要であるとされている。さらに、レジスタンストレーニング専門職は、女子選手のニーズに共感し、選手としてだけでなく個人としての敬意を示して対話をするべきである。こうした人間関係を築くことは、特に女性に対しては重要である(19)。また、レジスタンストレーニング環境は、女子選手を尊重し、そして女子選手がレジスタンストレーニングを行うことの社会的認知と重要性を高めるものでなければならない。こうした環境をつくることによって継続性は向上すると考えられる(4)。まずは、不健康な、または性差別的な女性の画像が載った雑誌を全部取り除くことである。また、女子選手に不快感を抱かせたり、怯えさせるような言葉や行動を許可しない。男性と女性がウェイトルームを共有している場合は、パワー系リフティングの実施に必要なフリーウェイト機器を含めて、男性と女性が設備を平等に使えるようにする。もっと大きなスケールでは、女性と男性でウェイトトレーニング施設が違う場合、それらの施設の大きさを同じにし、また同等の設備を備えるようにする。施設が同等でないならば、それは、強い男子選手のほうが社会的価値が高く、レジスタンストレーニングは男性的なものであるという観念を永続化させかねないのである。

まとめ
女子選手のレジスタンストレーニングの継続性を高めることは、特にレジスタンストレーニングが行われている現在の社会的状況を考慮すると、レジスタンストレーニング専門職にとっての難題である。熟達経験が潜在的に不足している、また女性の模範となる人が極めて少ないということが、レジスタンストレーニングに対する女子選手の自信が相対的に低い原因と考えられる。レジスタンストレーニングプログラムの継続を阻む壁は、この他にも数多く存在している。女子選手にとって、性役割という観念は、レジスタンストレーニングを習慣とする過程において克服しなければならないもうひとつの壁である。女子選手のレジスタンストレーニングの継続性を最大限に高めるために、レジスタンストレーニング専門職は、レジスタンストレーニングを行う環境の性差別的な状況を考慮しなければならない。

Diane Gillによると「もし反性差別主義者たらんとし、性別にかかわらず誰でも同じように扱い、性差は問題ではないと考えるならば、困難に遭うだろう。性差は問題なのである。誰でも同じように扱おうとすると、かえって選手に害をもたらす」(16)。

最後に、レジスタンストレーニングを行う環境の性差別的背景に対応することは、レジスタンストレーニング専門職にとって重要であるが、その性差別的な社会環境を変えるために働きかけることもまた重要であることを強調しておかなければならない。この種の社会的な変化を達成できるのは、性差による不公平性の問題についての一般の人々の認識の高まりを通じてであり、そのためには学校や組織を教育し、影響を及ぼすこと、そして社会的変化に対する一般の人々の支持を獲得することが必要なのである(3)。

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