HPCスタッフコラム

2018.12.13

コンプレッションウェアの効能

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近年、多くのアスリートから一般の方までが着用するコンプレッションウェア。その効果を検証する研究は以前から行われており、様々な結果が報告されています。簡単に結果をまとめると以下のことが報告されています。

  • パワーやスプリントの最大パフォーマンスに変化はない(4、5、7)。
  • 連続したハイパワーの動作においてパワーの減少率が低下する(4)
  • 筋にダメージを与えるような運動中に着用することでダメージを軽減させる(1)。
  • 主観的な疲労度や回復度、筋肉痛の度合いの軽減といった心理的な効果は報告されています(3、6、7)
  • 回復期にコンプレッションウェアを着用することでその後の持久的または繰り返しのスプリントのパフォーマンスが向上するという報告も(2、5)。

圧迫の強度や覆う範囲など様々な要素が関係してきますので、まだまだ研究が必要だとは思いますが、今のところ即座にパフォーマンスを向上させる効果はないと言えるでしょう。また回復に関しても主観的な部分が強いように思えます。ただパワーの減少率が低下するというのは興味深い報告で、ハイパワーを連続して出すようなスポーツには効果的かもしれません。

今回紹介する研究では、ハンドボール選手を用いて実際の試合のシチュエーションを考慮したサーキット中のコンプレッションウェアの効果を検証しています。

 

Benefits of compression garments worn during handball-specific circuit on short-term fatigue in professional players.
ハンドボール選手において、ハンドボールに特異的なサーキット中にコンプレッションウェアが短期の疲労におよぼす効能

Ravier, G, Bouzigon, R, Beliard, S, Tordi, N, and Grappe, F.

J Strength Cond Res 32(12): 3528–3536, 2018

目的
この研究の目的は、ハンドボール特異的なサーキット中に脚全体を覆うコンプレッションウェアを着ることによって、運動パフォーマンス及び筋力と筋痛の疲労による急性的な変化におよぼす効果をプロハンドボール選手において調べることである。

被験者
18名の男性プロハンドボール選手(平均±標準偏差:年齢23.22±4.97歳、体重82.06±9.69 kg、身長184.61±4.78 cm)

方法
無作為のクロスオーバー研究として、被験者は2つの同一のセッションを、普通のハーフパンツまたはコンプレッションウェア(CG)のどちらかを着用して行った。爆発的エクササイズのサーキットはスプリント、ジャンプ、アジリティドリル、ハンドボール特異的な動作を含む7種目を25秒毎にスタートし、それを12分間行った。サーキットは4分間の休息をはさみ3回行った。サーキット中のスプリント及びジャンプのパフォーマンスは記録されモチベーションを維持するために選手にもフィードバックされた。サーキット前、終了直後及び24時間後に、最大自発性膝伸展筋力(自発性最大収縮、Maximum Voluntary Contraction(MVC))、力の発揮率(RFD)、筋痛(圧痛限界、Pressure-Pain Threshold(PPT))を評価した。

結果
サーキット中のスプリント及びジャンプのパフォーマンスは両方の条件で変化はなかった。サーキットを行った直後に、両方の条件においてMVC、RFD及びPPTの値が直前の値と比較して有意に減少した。減少量はRFD(効果量(ES)=0.40)及びヒラメ筋のPPT(ES=0.86)において両方の条件下で同様であった。しかしながら、CGを用いた場合はMVCの減少量が小さなり(p<0.001)、一般的なハーフパンツと比べて減少量が小さかった(ES=1.53、CG=-5.4%に対してハーフパンツ=-18.7%)。24時間後において両方の条件下で筋痛、MVC及びRFDの全回復が見られた。

結論・応用
この研究の結果から、脚全体を覆うコンプレッションウェアを着ることは、爆発的なエクササイズを含むサーキットの最中のスプリントやジャンプのパフォーマンスは向上や24時間後の筋力や筋痛等の回復のためには勧められない。しかし、サーキット直後のMVCの減少量が少なかったことから、タックルやポジションの奪い合いなどの動作を行う必要のあるハンドボール選手においてはコンプレッションウェアを着ることは有効的であろう。

オリジナルの文献はこちら

 

コンプレッションウェアを着用することによる回復の効果はこの研究結果からは見られませんでした。また即座のパフォーマンスの向上も以前の研究と同様に期待できないことが確認されました。

しかし、Kreamerらの研究(4)と同様に今回の研究ではMVCの減少量の低下が見られました。このことからハイパワーの動作であるジャンプや短いスプリントを繰り返し行わなくてはならないスポーツではその効果が期待できるかもしれません。

参考文献
1. Valle, X, Til, L, Drobnic, F, Turmo, A, Montoro, JB, Valero, O and Artells, R., Compression garments to prevent delayed onset muscle soreness in soccer players, Muscles Ligaments Tendons J. 3(4): 295–302, 2013
2. Hamlin, MJ, Mitchell, CJ, Ward, FD, Draper, N, Shearman, JP, and Kimber, NE. Effect of compression garments on short-term recovery of repeated sprint and 3-km running performance in rugby union players. J Strength Cond Res 26(11): 2975–2982, 2012
3. Pruscino, CL, Halson, S and Hargreaves, M, Effects of compression garments on recovery following intermittent exercise, European Journal of Applied Physiology, 113(6), 1585–1596, 2013
4. Kraemer WJ, Bush, JA, Bauer, JA, Triplett-McBride, NT, Paxton, NJ, Clemson, A, Koziris, LP, Mangino, LC, Fry, AC, Newton, RU, Influence of Compression Garments on Vertical Jump Performance in NCAA Division I Volleyball Players, J Strength Cond Res, 10(3), 180-183, 1996
5. Duffield, R and Portus, M, Comparison of three types of full-body compression garments on throwing and repeat‐sprint performance in cricket players, Br J Sports Med. 41(7), 409–414, 2007
6. Duffield, R Cannon, J and King, M, The effects of compression garments on recovery of muscle performance following high-intensity sprint and plyometric exercise, Journal of Science and Medicine in Sport, 13 (1), 136-140, 2010
7. Duffield, R, Edge, J, Merrells, R, Hawke, E, Barnes, M, Simcock, D and Gill N, The Effects of Compression Garments on Intermittent Exercise Performance and Recovery on Consecutive Days, International Journal of Sports Physiology and Performance, 3, 454-468, 2008