HPCスタッフコラム

2018.12.20

異なるトレーニングボリューム(総レップ数)の急性的な効果の比較

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張力下の時間(Time Under Tension: TUT)はこのコラムで以前紹介したように筋肥大を目的としたトレーニングにおいて重要なトレーニング刺激の一つとなります(1)。

トレーニング効果を検証する研究では、数多くある変数(強度、ボリューム、TUT、動作距離等)の中から少数を抜き出して比較するのが一般的です。そのためそれ以外の変数が結果に影響を及ぼさないように群間で一定にする必要があります。

今回紹介する研究は、トレーニングにおけるボリューム(総レップ数)がTUTや強度を一定にした状態でどのような身体の反応を引き起こすかを検証しています。

 

Acute physiological responses to an intensity-and time under-under-tension-equated single- vs. multiple-set resistance training bout in trained men.
トレーニング経験のある男性において、強度と張力下の時間を均等にした1セットまたは複数セットのレジスタンストレーニングに対する急性の生理的反応

 

Cintineo, HP, Freidenreich, DJ, Blaine, CM, Cardaci, TD, Pellegrino, JK, and Arent, SM.

J Strength Cond Res 32(12): 3310–3318, 2018

目的
環境に関係なく、レジスタンストレーニングプログラムデザインの変数の正しい調整は目的とする生理的な適応を引き起こすために重要である。さらに、これらの変数、特にボリューム(総レップ数)と強度がどのように連帯してトレーニングに対する結果に影響を与えるかは研究の重要なトピックである。この研究の目的は、ボリューム(総レップ数)の急性的な効果をより良く理解するために、エキセントリック動作を強調した1セットの高強度トレーニング(HIT)と一般的な3セット行うプロトコルの急性のバイオメカニクス的、生理的及び内分泌的な反応を比較することである。

被験者
レジスタンストレーニングを行う男子大学生(N=19、年齢=21.11±2.5歳、身長=174.33±6.83 cm、体重=76.72±10.24 kg、体脂肪率=15.53±6.35 %)で、最低でも1年間のレジスタンストレーニングの経験がある。

方法
被験者は無作為に1セットのHITまたは3セットの一般的なプロトコル(3ST)に振り分けられた。それぞれのグループは45°レッグプレス、レッグエクステンション、ルーマニアンデッドリフト(RDL)、腹臥位レッグカール、ヒップアダクター、及びシーテッドカーフレイズを行った。3STグループは各エクササイズの10RM の100%にて行いセット間及びエクササイズ間に90秒の休息を挟んだ。コンセントリック:エキセントリック比が1秒:1秒のテンポで各セットにおいて疲労限界まで行った(9-12回、約20秒/セット)。HITグループは各エクササイズの10RMの75~85%にてエクササイズ間に90秒の休息を設けた。コンセントリック:エキセントリック比が2秒:4秒のテンポで疲労限界まで行った(9-12回、約60秒)。心拍数(HR)、血中乳酸値、唾液中のテストステロン値及び唾液中のコルチゾール値がエクササイズ前、最中及び後数回に計測された。

結果
結果では、どの時点における平均HR及びテストステロン値の2グループ間の差は示されなかった。しかしながら3STグループはエクササイズ中の最大HR及び血中乳酸値、エクササイズの30分後のコルチゾール値においてHITグループよりも高い値を示した。これは同様の張力下の時間にも関わらず、HITプロトロコルよりも3STのプロトコルにおいてより大きな代謝的ストレスが引き起こされ、またホメオスタシスのバランスもより大きく乱されたことを示唆する。

結論・応用
これらの結果は、一時的な筋の疲労限界までトレーニングした時でも、トレーニングによる刺激の主要な原動節はボリューム(総レップ数)であると思われることを示した。

オリジナルの文献はこちら

 

この研究結果はGentilらの研究(2)の結果と同様で、同じような張力下の時間でトレーニングを行う場合はより総回数の多い方がトレーニングの刺激が大きいことを示しました。トレーニングにおける適切なセット数に関する文献(3)でも示されていますが、やはり同一エクササイズにおいて複数のセット数を行うことはトレーニング効果を向上させるためには重要なことだと言えるでしょう。

参考文献
1. Nicholas A. Burd Richard J. Andrews Daniel W.D. West Jonathan P. Little Andrew J.R. Cochran Amy J. Hector Joshua G.A. Cashaback Martin J. Gibala James R. Potvin Steven K. Baker Stuart M. Phillips. Muscle time under tension during resistance exercise stimulates differential muscle protein sub-fractional synthetic responses in men. J Physiol 590.2: 351–362, 2012
2. Gentil P, Oliveira E, and Bottaro M. Time under tension and blood lactate response during four different resistance training methods. J Physiol Anthropol 25: 339-344, 2006.
3. Krieger, J., Determining Appropriate Set Volume for Resistance Exercise, Strength and Conditioning Journal, 20(3), 63-65, 2013