HPCスタッフコラム

2019.07.03

レジスタンストレーニングセッションに対する朝食の効果

画像

朝食は一日の最初の食事であり、睡眠時に枯渇したエネルギー源を補給するための大切な機会でもあります。起床時に炭水化物が豊富な食事を摂取することで枯渇したグリコーゲンを再貯蔵し、さらにその後のエクササイズのパフォーマンスを向上させることができます(1)。

現在報告されている朝食とエクササイズの関係性は持久系のエクササイズに対して多くなされており、レジスタンストレーニングに関しては少なく、また多くが炭水化物の摂取に関するものであり、朝食に限定したものではありません。今回紹介する研究は、朝食に限定した食事の摂取がレジスタンストレーニングの実施ボリュームに与える影響を検証しています。

 

Breakfast omission reduces subsequent resistance exercise performance.
朝食を抜くことでその後のレジスタンスエクササイズのパフォーマンスが低下する

Bin Naharudin, MN, Yusof, A, Shaw, H, Stockton, M, Clayton, DJ, and James, LJ.

J Strength Cond Res 33(7): 1766–1772, 2019

目的
多くの研究において朝の炭水化物の摂取(朝食)の持久的なパフォーマンスにおよぼす影響が徴されているにも関わらず、レジスタンスエクササイズのパフォーマンスに対して解明されていることは多くない。

被験者
16名のレジスタンストレーニングを行う男性(年齢:23 ± 4歳;体重:77.56 ± 7.13 kg;身長1.75 ± 0.04 m)

方法
日常的(週3日以上)に朝食をとるレジスタンストレーニングを行う男性がこの研究に参加した。10RMの評価及び習熟過程を終了した後、被験者は2つの無作為試験を行った。一夜の断食の後、被験者は典型的な朝食(体重あたり1.5gの炭水化物を含む;朝食群)または水のみ(朝食抜き群)のどちらかを摂取した。2時間後に、被験者は10RMの90%の負荷でバックスクワット及びベンチプレスを4セット、各セットで拳上できなくなる回数まで行った。空腹感、満腹感、食欲、及びその後の食事量を100 mmの視覚的アナログスケールを用いて朝食または水の摂取直前、直後、1時間後そして2時間後に計測した。

結果
総レップ数は朝食なし群においてバックスクワット(朝食なし群:58 ± 11回;朝食群:68 ± 14回;効果量(ES) = 0.98;p < 0.001)およびベンチプレス(朝食なし群:38 ± 5回;朝食群:40 ± 5回;効果量(ES) = 1.06;p < 0.001)において少なかった。朝食群は朝食なし群と比較して満腹感が大きく、空腹感、食欲、及びその後の食事の量が少なかった(p < 0.001)。

結論・応用
この研究の結果は、定期的に朝食をとる人がエクササイズ前の朝食を抜くことでレジスタンスエクササイズのパフォーマンスを妨げることを示した。したがって、レジスタンスエクササイズ前に高炭水化物の食事をとることはパフォーマンスを最大限に発揮するための効率的な方法であるかもしれない。

オリジナルの文献はこちら

 

グリコーゲンは筋活動のエネルギー源であり、その欠乏は持久的なエクササイズにおいて影響が多いようです(2)。トレーニングセッションにおける総ボリュームが少ない場合については、グリコーゲン量はあまり重要でないようですが(3)、この研究のようにトレーニングセッションのボリュームが多く、多くのレップ数をこなすような場合はグリコーゲンの貯蔵量が重要になってくるようです。特に、ボリュームが多くなる筋肥大のためのトレーニングや筋持久力が重要となるスポーツにおいては、適切な量の炭水化物を摂取し、グリコーゲンが体内に貯蔵されている状態でトレーニングに臨むことが大切でしょう。

また、朝食を抜くことで、夕方に行うエクササイズのパフォーマンスに影響が出るという報告もあります(4、5)。スポーツやトレーニングのパフォーマンスを最大限に発揮したい場合は朝食をしっかりと取ることでグリコーゲンを再貯蔵することが重要でしょう。

 

参考文献
1. Hargreaves, M., Hawley, J. A., & Jeukendrup, A. (2004). Pre-exercise carbohydrate and fat ingestion: Effects on metabolism and performance. In Journal of Sports Sciences (Vol. 22, pp. 31–38)
2. Clayton, D. J., & James, L. J. (2016). The effect of breakfast on appetite regulation, energy balance and exercise performance. Proceedings of the Nutrition Society, 75(3), 319–327
3. Fairchild, T. J., Dillon, P., Curtis, C., & Dempsey, A. R. (2016). Glucose Ingestion Does Not Improve Maximal Isokinetic Force. Journal of Strength and Conditioning Research, 30(1), 194–199
4. Clayton, D. J., Barutcu, A., Machin, C., Stensel, D. J., & James, L. J. (2015). Effect of Breakfast Omission on Energy Intake and Evening Exercise Performance. Medicine and Science in Sports and Exercise, 47(12), 2645–2652
5. Cornford, E., & Metcalfe, R. (2019). Omission of carbohydrate-rich breakfast impairs evening 2000-m rowing time trial performance. European Journal of Sport Science, 19(1), 133–140