HPCスタッフコラム

2019.09.25

ユース年代のバスケットボール選手のプライオメトリクス

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トレーニング効果を継続して得るためには過負荷の原則にのっとって身体にかかる負荷を適応に応じて増加させていくことが必要です。過負荷の方法として、重量やボリューム、難易度、動作の速度などを増加させることが挙げられます。ウェイトトレーニングでは、身体の能力(筋力や筋量、パワー等)が向上する主に重量やレップ数を変化させることで過負荷を与えることが一般的です。プライオメトリクスのトレーニングでも、体重を変化させたり、回数を変化させたりする他に、両足から片脚にする、抵抗を加えるなどで負荷をコントロールすることができます。

今回紹介する研究は、ユース年代のバスケットボール選手において、適切な過負荷を与えることでトレーニングを漸進させることが身体のフィットネス要素や体組成にどのような影響を与えるかを検証しています。

 

Effects of progressed and nonprogressed volume-based overload plyometric training on components of physical fitness and body composition variables in youth male basketball players.
ユース年代の男子バスケットボール選手において、漸進を伴うvs伴わないボリュームを基準とした過負荷のプライオメトリクストレーニングが身体フィットネス要素と体組成に与える効果

Palma-Muñoz, I, Ramírez-Campillo, R, Azocar-Gallardo, J, Álvarez, C, Asadi, A, Moran, J, and Chaabene, H.

J Strength Cond Res XX(X): 000–000, 2018

目的
この研究では、ユース年代の男子バスケットボール選手においてを活動的なコントロールグループと比較して、6週間の漸進させるまたは漸進させない、ボリュームを基準とした過負荷のプライオメトリクストレーニング(PT)が身体フィットネス要素と体組成の数値に与える効果を検証した。

被験者
地域のバスケットボールチームから22名のユース年代の男子選手(年齢:13.5±2.0歳、身長:160.1±10.9 cm、体重:62.1±13.5 kg)

方法
被験者は、無作為に漸進させるPT(Progressive Plyometric Training(PPT);n=7、年齢=14.6±1.1歳)、漸進させないPT(Non-progressive Plyometric Training(NPPT);n=8、年齢=13.8±2.0歳)またはコントロール群(CG;n=7、年齢14.0±2.0歳)に振り分けられた。トレーニング期間の前後に、体組成の数値(筋量と体脂肪量)、腕の動きを伴う垂直跳び(CMJA)、腕の動きを伴わない垂直跳び(CMJ)、立ち幅跳び(HCMJ)、右脚(RJ)と左脚(LJ)での跳躍、20cmからのドロップジャンプ(DJ20)、スプリントスピード(10mスプリント)及び方向転換スピード(Tテスト;CODS)の測定を行った。

結果
筋量と体脂肪量、全ての跳躍の数値及びCODにおいて有意な効果が見られた(全てp<0.01、d=0.37~0.83)。有意なグループ間の差が全ての跳躍の数値に見られた(全てp<0.05、d=0.24~0.41)。事後分析において、PPT群(RJ:Δ18.6%、d=0.8、LJ:Δ22.7%、d=0.9、HCMJ:Δ16.4%、d=0.8、CMJ:Δ22.4%、d=0.7、CMJA:Δ23.3%、d=0.7、及びDJ20:Δ39.7%、d=1.1)及びNPPT群(LJ:Δ14.1%、d=0.4、及びDJ20:Δ32.9%、d=0.8)においてトレーニング前後に有意なパフォーマンスの向上がみられ、これらの変化はNPPTと比較して全ての跳躍の数値においてPPT群が大きかった(全てp<0.05、d=0.21~0.81)。トレーニング効率はPPT(跳躍一つにつき0.015%)の方がNPPT(跳躍一つにつき0.0053%)よりも高かった(p<0.05、d=0.22)。

結論・応用
PPTの方がNPPTと比較して、身体要素の数値においてより大きなパフォーマンスの向上をもたらした。したがって、少年の男子バスケットボール選手において、シーズン中において、漸進を伴うボリュームを基準とした過負荷のPTが推奨される。

オリジナルの文献はこちら

 

この研究の介入では、プライオメトリクストレーニングのセットごとの回数を、週を追うごとに増加させることで負荷を漸進させていきました。実施したエクササイズなどの他の要素は変化させませんでした。一方の漸進を伴わないグループは、最初の週に行った回数を6週間にわたって維持させました。プライオメトリクストレーニングを行うことで、跳躍や方向転換のパフォーマンスが向上し、さらに、跳躍のパフォーマンスにおいては負荷を漸進させることでさらにトレーニング効果を高めることが実証されました。

コントロール群はバスケットボールの練習のみでプライオメトリクスのトレーニングを行わなかったところ、跳躍のパフォーマンスに向上は見られませんでした。バスケットボールはその競技特性上、競技の練習においても跳躍動作を多く行うことが考えられますが、跳躍能力を向上させるためには十分な刺激とはならず、研究の対象となった年代(10~15歳)において跳躍能力を向上させるためには、バスケットボールの練習の他にプライオメトリクストレーニングの必要性が示唆されています。