HPCスタッフコラム

2020.03.12

負荷を増加させるか?それともエクササイズを変えるか?

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トレーニングにはオーバーロードの原則があり、身体に適応を促すにはより大きな刺激を与える必要があります。その方法には、負荷を増加させるだけでなく、トレーニングの頻度やセットを増加させる、エクササイズを増やす、より複合的なエクササイズを用いる、レスト時間を短縮するといったことがあげられます(1)。このようにトレーニングの効果を長期的に継続して得るためには、適切なプログレッション(漸進)が必要不可欠です。

今回紹介する研究は、筋肥大および筋力の向上を目的とした場合、負荷、エクササイズまたはその両方を変化させる方法を比較し、どの方法が最も効率的であるかを検証しています。

 

Changes in exercises are more effective than in loading schemes to improve muscle strength.
筋力の向上には負荷の設定よりもエクササイズの変化がより効果的である。

Fonseca, RM, Roschel, H, Tricoli, V, de Souza, EO, Wilson, JM, Laurentino, GC, Aihara, AY, de Souza Leão, AR, and Ugrinowitsch, C.

 J Strength Cond Res 28(11): 3085–3092, 2014

目的
この研究は多様なストレングストレーニングエクササイズと負荷設定が筋の横断面積(CSA:Cross-Sectional Area)と最大筋力に及ぼす効果を4つの負荷設定のストレングストレーニング(一定の強度と一定のエクササイズ(CICE:Constant Intensity and Constant Exercise)、一定の強度と多様なエクササイズ(CIVE:Constant Intensity and Varied Exercise)、多様な強度と一定のエクササイズ(VICE:Varied Intensity and Constant Exercise)、および多様な強度と多様なエクササイズ(VIVE:Varied Intensity and Varied Exercise))の後に検証した。

被験者
49名の活動的な成人男性

方法
49名が5つのグループ(CICE、CIVE、VICE、VIVEおよびコントロール(C))に振り分けられた。介入グループは週に2回のトレーニングを12週間行った。スクワットの最大挙上重量をベースラインとトレーニング期間終了後に評価した。大腿四頭筋の全体と筋頭のCSAもトレーニング前と後で測定した。

結果
大腿四頭筋全体のCSAは右脚、左脚の両方ですべての介入グループにおいてトレーニング前後で有意に増加した(p ≤ 0.05): CICE:11.6と12.0%、CIV:11.6と12.2%、VICE:9.5と9.3%、VIVE:9.9と11.6%、それぞれ右脚と左脚。CIVEとVICEグループは大腿四頭筋すべての筋頭において筋肥大を示し(p ≤ 0.05)、CICEおよびVICEではそれぞれ内側広筋および大腿直筋と大腿直筋に筋肥大が見られなかった(p > 0.05)。CIVEグループはその他のトレーニンググループよりも筋力の向上が大きかった(信頼限界の差異の効果量(ESCLdiff:effect size confidence limit of the difference)CICE:1.41~1.56、VICE:2.13~2.28、VIVE:0.59~0.75)。

結論・応用
この結果は:a)CIVEは活動的な人において筋力獲得に対してより効率的である、b)トレーニング強度が主張する域に達していれば、トレーニング強度やエクササイズの多様性に関係なく筋肥大は同様であることを示唆した。

オリジナルの文献はこちら

 

この研究で用いられたエクササイズは、CICEおよびVICEグループではスクワットのみ、CIVEおよびVIVEグループは最初の4週間はスクワットとレッグプレス、次の4週間はスクワットとデッドリフト、最後の4週間はスクワット、デッドリフト、そしてランジでした。重量はそれぞれの負荷設定に応じて6~10RMが用いられました。

この研究では筋肥大についてはどの方法にも差は見られず、同様の筋の肥大が起こりましたが、筋力については、すべての方法で筋力の向上は起きたもののCIVEグループは他のグループと比べて筋力がより向上したことが示されました。負荷設定に対してはSchoenfeldら(2)も様々な負荷設定を比較した場合に同様の筋肥大の効果があることを示しました。しかし、単一エクササイズと同様の筋群をターゲットにした様々なエクササイズを用いたトレーニングプログラムを比較した先行研究はありません。

エクササイズのバリエーションを増やすことで、関節や筋に様々な刺激を与えることができ、それに応じた身体の適応も望めるでしょう。スポーツや他の身体活動においては様々な形で負荷がかかるため、傷害予防などの観点からもバリエーションを増やすことは利点であると考えられます。

筋力の向上を目的とした場合、エクササイズのバリエーションを増やすことで筋力向上の効率が良くなることが示されました。そのため、ストレングスコーチやパーソナルトレーナーは負荷や重量の設定方法だけでなく、様々なエクササイズのバリエーションやプログレッションの知識を持つことでより効率的に筋力を向上させることができるでしょう。

 

参考文献
1. Haff, GG and Triplet, NT (2016) Essentials of Strength Training and Conditioning, Fourth Edition, Champaign, IL: Human Kinetics
2. Schoenfeld, B.J., Contreras, B., Ogborn, D., Galpin, A., Krieger, J., and Sonmez, G.T. (2016). Effects of Varied Versus Constant Loading Zones on Muscular Adaptations in Trained Men. International Journal of Sports Medicine 37, 442–447.