HPCスタッフコラム

2020.04.14

減量中における筋量維持のためのサプリメント摂取

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プロテインサプリメントの摂取はレジスタンストレーニングやスポーツを行うアスリートや一般の人にとって一般的です。特にレジスタンストレーニングにおけるプロテインサプリメントの効果には、筋肥大に始まり、筋力の向上、さらには有酸素持久力の向上といったものがあげられます(1)。これは、レジスタンストレーニング後に必須アミノ酸(たんぱく質が分解されたもの)を摂取することで体内のタンパク合成が増加すること(2)よります。

体重の減量の際には、徐脂肪体重と体脂肪の両方が同時に減少していくのが一般的ですが、エクササイズによってその減少を抑制することもできるようです(3)。減量が必要なアスリートや一般の人にとって筋量の減少は代謝を減少させるだけでなく筋力やパワー発揮の低下などパフォーマンスの低下をまねく可能性もあります。

今回紹介する研究では、高強度のレジスタンストレーニングを行いながらの減量中にたんぱく質または炭水化物のサプリメントを摂取することで体重の減少に伴う徐脂肪体重と脂肪量の変化を検証しています。

 

Effect of whey protein in conjunction with a caloric-restricted diet and resistance training.
カロリー制限した食事とレジスタンストレーニングと合わせたホエイプロテインの効果

Dudgeon, WD, Kelley, EP, and Scheett, TP.

J Strength Cond Res 31(5): 1353–1361, 2017

目的
カロリー制限による体重の減量、特に急速な減量、は徐脂肪量と脂肪量(FM:Fat Mass)の両方が減少することによる。多くの人にとっての目標はFMを減少させながら徐脂肪量(LBM:Lean Body Mass)と筋のパフォーマンスを維持することであり、そのため多くはサプリメントに関心が向くのである。

被験者
16名の健康でレジスタンストレーニングを定期的に行う男性(24±1.6歳)

方法
16名のレジスタンストレーニング経験のある男性が、ボディビルスタイルのスプリットレジスタンストレーニングプログラム(部位別に行うトレーニングプログラム)を週に4日、8週間を行い、同時にエクササイズ前、中、および後にホエイプロテイン(WHEY)の栄養素サプリメント、または炭水化物(CON)ベースの栄養素サプリメントを摂取した。。

結果
体重は両群ともに減少したが、変化にWHEY群とCON群の間に差異はなかった(p≦0.05)。しかし、WHEY群はLBMを維持したが、CON群は減少し(p≦0.05)、そしてWHEY群はFMが減少し(p≦0.05)、CON群はしなかったが、FMの変化に群間の差はなかった。WHEY群とCON群の両群ともに下半身の筋力が有意に向上した(p≦0.05)。WHEY群は上半身の筋力を増加させたが(p≦0.05)、一方でCON群は変化しなかった。両群ともに下半身の疲労までのレップ数を増加させたが(p≦0.05)、CON群の増加がより大きかった(p≦0.05)。CON群は上半身のレップ数も増加させたが(p≦0.05)WHEY群は増加しなかった。WHEY群はFMからなる体重が減少し、CON群も体重が減少したが、この減少はLBMの減少によるものであった。いずれの群も筋パフォーマンスの低下はなく、WHEY群は筋力、CON群は持久力が向上する傾向をみせた。

結論・応用
これらのデータは、炭水化物と比較してWHEYのサプリメント摂取は、カロリー制限した減量のための食生活中にFMを減少させながらLBMの維持ができることを示している。

オリジナルの文献はこちら

 

たんぱく質のサプリメント摂取によって徐脂肪体重が維持されることが示されました。この研究で用いられた食事はボディビルダーの食事を模倣し、たんぱく質摂取の割合の多い内容になっていました(トレーニング日:炭水化物30%、たんぱく質35%、脂質35%、非トレーニング日:炭水化物25%、たんぱく質40%、脂質35%)。よって、炭水化物群もたんぱく質の量が少ないというわけではないと思いますが、強度の高いボディビルスタイルのレジスタンストレーニングを行うことで体内のタンパク合成がより活性化されることでより多くのたんぱく質を必要とした結果、炭水化物群の筋量が低下してしまったのでしょうか?Burdら(4)は、高ボリュームのレジスタンストレーニングは筋のタンパク合成をより刺激すると報告しています。

また興味深いのは、炭水化物群が筋の持久力を向上させたことです。筋力には群間の差はみられませんでしたが、炭水化物群のみに筋持久力の向上がみられました。これは食事内容が上記の通り炭水化物の割合が比較的少ないことも関係しているかもしれません。

この研究の結果から、減量が必要とされる場合においては、筋量の維持を目的とした場合はたんぱく質のサプリメント摂取を、筋持久力がパフォーマンスの重要な要素である場合は炭水化物のサプリメント摂取が推奨されるでしょう。

参考文献
1. Pasiakos, S.M., McLellan, T.M., and Lieberman, H.R. (2014). The Effects of Protein Supplements on Muscle Mass, Strength, and Aerobic and Anaerobic Power in Healthy Adults: A Systematic Review. Sports Medicine 45, 111–131
2. Tipton, K.D., Ferrando, A.A., Phillips, S.M., Doyle, D., and Wolfe, R.R. (1999). Postexercise net protein synthesis in human muscle from orally administered amino acids. American Journal of Physiology – Endocrinology and Metabolism 276.
3. Ballor, D.L., and Poehlman, E.T. (1994). Exercise-training enhances fat-free mass preservation during diet-induced weight loss: A meta-analytical finding. International Journal of Obesity 18, 35–40
4. Burd, N.A., West, D.W.D., Staples, A.W., Atherton, P.J., Baker, J.M., Moore, D.R., Holwerda, A.M., Parise, G., Rennie, M.J., Baker, S.K., et al. (2010). Low-load high volume resistance exercise stimulates muscle protein synthesis more than high-load low volume resistance exercise in young men. PLoS ONE 5