HPCスタッフコラム

2020.06.05

筋力や筋量の適応に性別差はあるか?

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男性と女性の間には身体の構造やホルモンの分泌の違いなどが報告されています(1)。またエクササイズ後の免疫細胞の変化やサイトカインの分泌などにも性別差が報告されています(2)。エンデュランスエクササイズ中の基質の選択には性別差がみられたものの(3)、エンデュランストレーニングへの適応には性別差がなかったという報告があります(4)。

レジスタンストレーニングの適応についても様々な報告が上がっており、今回紹介する研究では、レジスタンストレーニングに対する適応の性別差に検証した研究を集め、分析したシステマティックレビューとメタ分析を行っています。

 

Sex differences in resistance training: A systematic review and meta-analysis.
レジスタンストレーニングにおける性別差:システマティックレビューとメタ分析

Roberts, BM, Nuckols, G, and Krieger, JW.

J Strength Cond Res 34(5): 1448–1460, 2020

目的
この研究の目的は、同じレジスタンストレーニングのプロトコルを用いて、若年と中年の男性と女性において筋力や筋肥大のためのレジスタンストレーニングへ異なる反応が現れるかどうかを検証することである。

方法
プロトコルはPROSPEROに事前登録されていた(CRD42018094276)。メタ分析は、複数層のデータ構造用のロバスト分散推定変量効果モデルを用いて行われ、少ないサンプル数の調整はRのrobumetaパッケージを用いた。統計的な有意性はP<0.05に定めた。

結果
筋肥大についての分析は10の研究からの12の結果によって構成され、男性と女性の間に有意な差はみられなかった(効果良(ES)=0.07±0.06、P=0.31、I2=0)。上半身の筋力についての分析は17の研究からの19の結果によって構成され、女性の有意な優位性が示されました(ES=-0.60±.016、P=0.002、I2=72.1)。下半身の筋力の分析では23の研究からの23の結果から構成され、性別間の有意性はみられませんでした(ES=-0.21±0.16、P=0.20、I2=74.7)。

結論・応用
筋肥大と下肢の筋力については、男性と女性が同様の効果量でレジスタンストレーニングへ適応したことが明らかになったが、女性は相対的な上半身の筋力でより大きな効果量がみられた。女性の上半身の筋力の分析での効果量が中程度であったことから、トレーニング経験のない女性は男性に比べて上半身の筋力の向上により大きな余地があった可能性がある。なぜ上半身のみにこの差が起こったのか、また、この差が神経、筋、動作の習得、または含まれた研究の期間が短いことによる影響かどうかを明らかにするためにさらなる研究が必要である。

オリジナルの文献はこちら

 

レジスタンストレーニングに対する筋力や筋量の適応については性別間の差があまりみられないことが示されました。また、上半身の筋力向上については女性のほうが、効果量が高くなることも明らかになりました。エンデュランストレーニングの適応にも性差がないという報告もあります。しかし、トレーニングやエクササイズに関する反応には違いがあるようです。そのため、適応の過程に性別による差があるのでしょうか?

けがの発生率やトライアッドなど、プログラムを作り上げる際には性別差に注意しなければならない項目もありますが、目的が筋肥大や筋力の向上であれば、男女間でプログラムを変更する必要性がないでしょう。

 

参考文献
1. Haff, GG and Triplet, NT (2016) Essentials of Strength Training and Conditioning, Fourth Edition, Champaign, IL: Human Kinetics
2. Gillum, T.L., Kuennen, M.R., Schneider, S., and Moseley, P. (2011). A review of sex differences in immune function after aerobic exercise. Exercise Immunology Review 17, 104–121
3. Carter, S.L., Rennie, C., and Tarnopolsky, M.A. (2001). Substrate utilization during endurance exercise in men and women after endurance training. American Journal of Physiology – Endocrinology and Metabolism 280.
4. Carter, S.L., Rennie, C.D., Hamilton, S.J., and Tarnopolsky, M.A. (2001). Changes in skeletal muscle in males and females following endurance training. Canadian Journal of Physiology and Pharmacology 79, 386–392