ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチインタビュー

S&Cコーチ
インタビュー
ストレングス&コンディショニングコーチ
CSCS, NSCA-CPT, マスターコーチ
吉田 直人 プロフィール
ストレングス&コンディショニングコーチ
M.A., CSCS
渡部 一郎 プロフィール

HPCを支える
ストレングス&コンディショニングコーチ
(S&Cコーチ)
インタビュー

S&Cコーチ、セミナー講師として
活躍中の吉田・渡部コーチにインタビュー形式で
S&Cコーチになるまでの経歴やNSCAの特徴、
これからHPCでやりたいことまでを語ってもらいました。

1.S&Cコーチを目指すきっかけ

吉田直人吉田直人コーチのケース
吉田さんがS&Cコーチになるまでの経緯を教えてください。
吉田

僕はスポーツの専門大学に入って勉強したわけでもなく元々は銀行員だったんで、異業種から脱サラしてS&Cコーチの道に入ったんです。なので他のコーチの方々とはかなり経歴が違うかもしれません。でもだからこそ、僕のように専門外のところからでも、頑張ればパーソナルトレーナーやS&Cコーチになれるって事もこれから学ぼうとしている若い人たちにも伝えていければと思ってます。

S&Cコーチを目指そうと思ったきっかけは何ですか?
吉田

僕は小学校から社会人までずっと野球をしていたんですが、肩を怪我してしまって野球を辞める事になってしまったんですよ。トレーニングすることはずっと好きだったんでトレーニングを教える仕事につきたいなと思って独学で勉強している時に、トレーニングで怪我を予防できるんだってことを知ったんですよ。だったらちゃんと勉強してそういうトレーニング方法を伝えていきたいって思ったんですよ。

ご自分が怪我で苦しんだからこそ、そういう情報を今の選手たちに伝えていきたい、と思われたんですね。
吉田

はい。傷害により競技を諦めるような事になってほしくない、自分と同じ想いを少しでもさせたくないと思ったんです。とにかくトレーニングで傷害予防ができ、競技力向上をさせることをきちんと伝えたいと思いました。

独学でトレーニングについて学ばれたということですが具体的にどうやって勉強したんですか?
吉田

最初はもう図書館に行ってあらゆる(トレーニングの)本を読み漁ったんです。それで図書館でエッセンシャルって800ページ位のNSCAの本(ストレングストレーニング&コンディショニング第1版)を見つけて初めてNSCAという存在を知りました。その本を読んでS&Cの考えを知り、S&Cコーチの仕事につきたいなと思い資格をとるためにNSCAの会員になりました。NSCA-CPTの資格をまず取って次にCSCSを取りました。

それで、資格を取った頃にウイダートレーニングラボ(ウイダー)のストレングス&コンディショニングセミナーに参加して、そのトレーニング概念に感銘を受けて是非ウイダーで働きたいと思ったんです。アルバイトから始めて10年間ウイダーで働かせてもらいました。そこにはウイダーと契約している選手やチーム、色々なプロ選手やJリーグの選手、オリンピック選手の指導ができたんです。この経験は自分にとても大きかったと思います。ウイダーでの10年間は自分のコーチとしての基盤を作ってくれたと言えます。

渡部一郎渡部一郎コーチのケース
渡部さんがS&Cコーチを目指すきっかけは何だったんでしょうか?
渡部

大学でサッカー部に入ってたんですけど、部活の方でも怪我が多く随分と悩まされたんですね。僕も吉田さんと似ているんですが「怪我をしないにはどうしたら良いだろう?」って考えて、そのことがS&Cを勉強してみようって思ったきっかけですね。

渡部さんはアメリカに留学してトレーニングを学ばれたと聞きましたが、、
渡部

はい。僕は、本場のアメリカで一から学びたかったんで日本で大学を卒業後渡米してその年の8月からネブラスカ大学オマハ校大学院に入り、そこで運動科学の修士課程に入りました。早くトレーニングの現場に出て学びたかったので入学後すぐに大学のウェイトルームのヘッドコーチにお願いしてボランティアで週5日働かせてもらいました。朝6時半から夜まで学業の傍らコーチングの手伝いをするという生活を半年続けていたら、ヘッドコーチが僕の事を認めてくれて、学生アシスタントS&Cコーチとして女子サッカーやゴルフなどのスポーツを担当させてもらうようになったんですね。

大学院在学中に既にお仕事を始められてたんですね。卒業後はどうされたんですか?
渡部

卒業後はネブラスカ大学アメリカンフットボール部のS&Cインターンを経て、ネブラスカ大学オマハ校にてアシスタントスポーツパフォーマンスディレクターに就任しました。アメリカの大学は大学自体が9万人入るようなスタジアムや代々木体育館よりも大きなバスケスタジアムを持っていて、全てにおいてスケールが違っていて少しびっくりしましたね。そこでアメリカンフットボール、バスケットボール、サッカー、野球、レスリングを担当していました。

アメリカでトレーニング方法を学ばれたことが渡部さんにとっては大きな経験になったのですね。
渡部

はい、そうですね。アメリカの場合、日本のように個別のチームごとに独立する形ではなく、大学のウェイトルームで全てのスポーツのチームを管理するシステムになっているので、いろいろなスポーツのトレーニングを指導しているうちに自然にどんなジャンルのスポーツの方にもトレーニング方法を教える事が出来るようになっていきました。僕のS&Cコーチの基盤はアメリカで作られたと言っても良いかもしれませんね。

2.NSCAジャパンの特徴とは?

お二人とも実績を見させてもらうとラグビー・サッカー・野球のアスリートから一般の方・モデルまで幅広くどんなスポーツ、ニーズまでも対応されているようですが、それだけ多彩なジャンルのアスリートを一人のS&Cコーチが教えることは難しくはないのでしょうか?
渡部一郎
渡部

体ってある刺激を与えると、それに特有の反応が返ってきます。それがわかっていると例えばこの競技にはこういう要素が必要でこういう能力を高めるためにこういう刺激が必要って理解できるんです。なのでそれぞれのスポーツに効果的なプログラムを僕らが作ることが出来るわけです。クライアントがモデルでもアスリートでも対応できるのがNSCAの有資格者の特徴であるかもしれません。
先ほども説明した通り、日本では(サッカーとかラグビーとか)一つ一つのスポーツにそれぞれフィジカルコーチがつきますがアメリカの大学ではストレングス&コンディショニングという部門が全てのスポーツを見て、指導していく考え方です。

人員の変動によってスポーツの担当換えなどもあるので様々なスポーツをみなければならなくなります。そんな時にベースとなるのがNSCAの提供する基礎的なトレーニングの知識ですね

HPCの現場では実際にトレーニングのデータをどのように活かしてらっしゃいますか?
吉田

NSCAには研究データや現場からの情報「こういう結果がでました」というデータや記事が豊富に揃っています。今まで指導させて貰った選手、クライアントのデータやこれからHPCに来館される方のご協力の元にトレーニングの検証等を通じて日々データを蓄積していきます。そういったデータ、経験を僕らは常に使わせてもらっている感じです。

だからこそ、自信を持ってトレーニングの指導ができるということなんですね。
吉田

そうです。だから新しい競技(自分がまだトレーニングの指導経験のない競技)を指導する時は、まずその競技の論文や記事にアクセスして目を通します。その情報を元にクライアントに必要なトレーニングを考えていきます。科学的根拠をベースにした上でクライアントの状況やニーズ、自分の今までの経験を加味してトレーニングを指導するように考えてます。他の団体との違いは、膨大に積み重ねられたデータ、論文を読むことが出来る事だと思います。毎年毎年、世界中から年間に500本以上の論文や現場からの記事が協会誌やウェブ上に出てきます。

JSCR(Journal of Strength and Conditioning Research)というNSCAが発行している研究論文雑誌があるんですがそれは凄い権威があるんですよ。その情報を私達は使ったりしてプログラムに反映させて現場で活かせるというのが資格者の一番の強みではないでしょうか。他のトレーニング関連団体はそこまでのS&Cに関する研究データ、記事は多分持っていないと思います。

3.HPCで今後やりたいこと

HPCで今後やっていきたいことってありますか
吉田直人
吉田

そうですね、僕らからも、日々現場でとったデータをもっと外へ発信していきたいんです。「こういうトレーニングをしたらこういう結果が出た」って伝えていきたいんですよ。研究者からは当然出るんですけど、現場からも出すことによって指導をしている人のアイデアになればと思っています。そうすると結局クライアントにも絶対に有益になっていくってことなんで、是非そうしていきたいんです。
(HPCでは)測定機材を持っているっていう強みがあるんですよ。普通なら大学の研究室にしかないようなものもHPCにはあるので。実際にAというエクササイズとBというエクササイズを比較してその筋肉の使われ方の違いとかを出したいんです。頭でイメージしてることと実際は違う可能性があるので、「ああこうなるんだ」って思って何かに活かしてもらえればと思います。それってなかなか指導現場では出来ないことだと思うんですよね。

渡部

研究で発表されるデータって硬い、と言うか、僕らが本当に知りたい事に直接的な答えをくれることって少ないんです。ですから僕ら現場の人間からアイディア出して実際に僕らが知りたいことを直接データとして発信していくことが重要だと思うんです。

吉田

NSCAのミッションのひとつに「現場と研究の橋渡し」というのがあるんですが、まさに僕らは現場よりなので、現場の疑問点とか、知りたい点を発信していければと思ってます。これはNSCAジャパンが施設を持ったからこそできることだと思います。

また、トレーニングの知識や技術のセミナーは勿論実施していきますが、現場指導で必要とされる様々な内容についても実施していきたいと思います。例えばすでに実施してますが、「どうやって伝えていき、選手・クライアントを導いていくのか?」というコーチングのセミナーもやってます。ビジネスの現場ではコーチングってよくやっているしそういう本も沢山出ています。トレーニング指導の現場でも「伝え方・聞き方」が必要で、そのことも1つの技術ですので、能力として必要とされると思います。

渡部さんが今後HPCで新たにやっていきたい事ってありますか。
渡部

日本においてS&Cコーチという職業をもっと確立していきたいっていう思いが強いです。それは絶対に個人で活動していていては出来ないことですよね。やっぱりNSCAのような団体が先陣切って場を整えてあげないとこれから育ってくる人も結局知識と経験があっても仕事が無いって言うのは本当に致命的なんで。実際僕がアメリカで見てきた理想的な職場環境っていうのを時間がかかるかもしれないけど整えたいんですよね。

お二人とも長時間どうもありがとうございました!