HPCスタッフコラム

2018.10.17

レジスタンスエクササイズ中の意識の集中

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「使用する筋を意識することによって、トレーニング効果を向上させる」と聞いたことはありませんか?

実際に研究でも、筋活性が上がるとされ(1、2)、筋によっては筋肥大の効果もあるようです(3)。レジスタンストレーニングにおいては、「使用する筋を意識する」や「筋をスムースに収縮させる」といった筋自体の動きに注目するのが内的な意識の集中の例とされ、一方で外的な意識の集中とは「ダンベルをスムースに動かす」や「バーベルを速く動かす」というように動作や物に対して意識を集中させることを指します。

今回紹介するのは、ベンチプレスにおいて内的・外的のどちらの意識の集中が筋活性に効果的かを検証した研究です。

External and internal focus of attention increases muscular activation during bench press in resistance-trained participants.
外的及び内的な意識の集中がレジスタンストレーニング経験のある被験者におけるベンチプレス中の筋活動を増加させる

Kristiansen, M, Samani, A, Vuillerme, N, Madeleine, P, and Hansen, EA.

J Strength Cond Res 32(9): 2442–2451, 2018

目的
ストレングストレーニングエクササイズの実施における指示された意識の集中の効果に対する研究は限られており、これまでは単関節エクササイズにのみ実施されていた。この研究の目的は、レジスタンストレーニング経験のある被験者のベンチプレス中における表面筋電図の振幅を、意識を内的(INT)または外的(EXT)に集中することを指示された場合の効果を、何も指示されていない場合(BASE)の基準値と比較することである。

被験者
21名のレジスタンストレーニング経験のある男性(年齢:24.5 ± 2.2才、範囲21–28、身長:1.81 ± 0.07 m、体重:89.0 ± 12.8 kg、ベンチプレスの3RM:109.4 ± 25.9 kg)

方法
被験者はBASE、EXT及びINTのそれぞれの条件で3RMの60%の重量でベンチプレスを行った。EXTの試行では、バーベルの動きに意識を集中させ、できる限りスムースにバーベルを動かすよう指示が出た。INTでは、胸筋の動きに意識を集中させ、できる限りスムースに筋を収縮、伸展させるように指示が出た。EXTとINTを行う順番は無作為かつ平衡させた。上半身及び下半身の13の筋(大胸筋(PM)、三角筋前部(DA)、上腕二頭筋(BB)、上腕三頭筋外側頭(TBL)、上腕三頭筋内側頭(TBM)、広背筋(LD)、脊柱起立筋(ES)、大腿直筋(RF)、大腿二頭筋(BF)、腓腹筋外側頭(GML)、ヒラメ筋(SOL)、外側広筋(VL)、内側広筋(VM))の筋電図データが記録され、EMG振幅の平均値と最大値が計算された。

結果
EXTとINTはBASEと比較して上半身の6個の筋(PM、DA、BB、TBM、LD、ES)のEMG振幅の平均値を有意に増加させた(p≦0.05)。加えて、EXTとINTは、BASEと比較して上半身の3個の筋(PM、TBM、LD)のEMG振幅の最大値の増加につながった。

結論・応用
これらの結果は、基準値としての意識を集中させないときの数値と比べ、意識を集中させることを指示された時にベンチプレス中の筋の活性が増加したことを示す。

オリジナルの論文はこちら

行う動作に対して意識を集中させることで、筋活性を高めることができることがこの研究で示されました。そしてその意識の集中は、内的なものだけでなく、外的なものでも効果があるようです。そのため、動員される筋を意識するだけでなく、結果としての動き(バーの速度や軌道)を意識することもトレーニング効果を上げる一つの方法と言えるでしょう。

ただ、今回はベンチプレスでしたが、スクワットやデッドリフト、またはより複雑なオリンピックリフティングの動作ではどのような反応がでるか、さらなる検証が必要です。

Schoenfeldら(2)は、競技スポーツのパフォーマンスや動作(1RMの測定を含む)では外的な意識の集中を、動作の結果(バーや体がどのように動く)よりも筋の活性や動員がより重要である場合(筋肥大が目的)は内的な意識の集中がそれぞれ適していると述べています。

いずれにせよ、内的、外的に関わらず意識を集中させることでエクササイズ中の筋活性を増加させることができるということで、何も意識せずにトレーニングを行うよりは、目的によって内的及び外的の意識の集中を使い分けることが大事といえます。

参考文献
1. Calatayud, J., Vinstrup J., Jakobsen, MD, Sundstrup, E., Brandt, M., JayK., Colado, JC, Andersen, LL, Importance of mind-muscle connection during progressive resistance training, European Journal of Applied Physiology, 116(3), 527–533, 2015
2. Schoenfeld, BJ, Contreras, B., Attentional Focus for Maximizing Muscle Development: The Mind-Muscle Connection, Strength and Conditioning Journal, 38(1), 27–29, 2016
3. Schoenfeld, BJ, Vigotsky, A., Contreras, B., Golden, S., Alto, A., Larson, R., Winkelman N. & Paoli A., Differential effects of attentional focus strategies during long-term resistance training, European Journal of Sport Science, 18(5), 705-712, 2018