HPCスタッフコラム

2018.11.21

タンパク質源の違いによるトレーニング効果の違い

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トレーニング後のたんぱく質の摂取が身体に好影響を与えることは広く知れ渡っており、多くの研究もされています。トレーニング後のタンパク質の摂取は体内のタンパク質の再合成を活性化し、筋肥大や筋力増加、また除脂肪体重の増加等に効果があります(1)。

トレーニング後に摂取するタンパク質としては、ホエイが一般的です。しかし、近年では乳糖不耐性やアレルギー、またはPaleoダイエットのような食事法によって乳製品を極力控える傾向がある中で、ビーフやチキンなどの食肉由来のプロテインパウダーが登場してきました。

今回の紹介する研究はホエイ、ビーフ及びチキンのプロテインパウダーの摂取が体組成と筋力の変化に与える効果を比較しています。

 

The effects of beef, chicken, or whey protein after workout on body composition and muscle performance.
ワークアウト後のビーフ、チキン及びホエイプロテインが体組成と筋のパフォーマンスに与える影響

Sharp, MH, Lowery, RP, Shields, KA, Lane, JR, Gray, JL, Partl, JM, Hayes, DW, Wilson, GJ, Hollmer, CA, Minivich, JR, and Wilson, JM.

J Strength Cond Res 32(8): 2233–2242, 2018

目的
この研究の目的は8週間のレジスタンストレーニングにおいてビーフタンパク質分離物(Beef)、チキンタンパク質加水分解物(Chx)またはホエイプロテイン濃縮物(WPC)のトレーニング後の摂取が体組成及び筋のパフォーマンスに与える効果をコントロール群と比較することである。

被験者
18歳から31歳までの41名の男性と女性(男性:19名、女性:22名)。すべての被験者は最低でも2年間のレジスタンストレーニングの経験があった。

方法
参加者は無作為に4つのグループに分けられた:WPC(男性5名、女性5名、年齢:19 ± 2歳、身長:171 ± 10 cm、体重:74.60 ± 14.19 kg)、Beef 男性5名、女性5名、年齢:22 ± 4歳、身長:170 ± 7 cm、体重:70.13 ± 8.16 kg)、Chx (男性5名、女性6名、年齢:21 ± 2歳、身長:169 ± 9 cm、体重:74.52 ± 13.83 kg)、そしてマルトデキストリン(コントロール)(男性4名、女性6名、年齢:21 ± 2歳、身長:170 ± 9 cm、体重:73.18 ± 10.96 kg)。また、普段の食事も均等(炭水化物50%、脂質25%、タンパク質25%)になるように栄養士の指導が入った。被験者は8週間の期分けされた週3回(月、水、金)のレジスタンストレーニング及び週2回(火、木)の低ボリューム高強度のインターバルトレーニングに参加した(図1)。46グラムのプロテインまたはコントロールをトレーニング直後またはトレーニングを行わない日における同時間に摂取した。最大筋はベンチプレス(上半身)及びデッドリフト(下半身)の最大拳上重量を用いて評価した。パワー出力はサイクルエルゴメーターを用いて計測した。
マルトデキストリン:デンプンを部分分解して作られる多糖。


図1. トレーニングプログラムの一例

結果
WPC(52.48 ± 11.15→54.96 ± 11.85 kg)、Beef(51.68 ± 7.61→54.65 ± 8.67 kg)及びChx(52.97 ± 12.12→54.89 ± 13.43 kg)のそれぞれのグループにおいて除脂肪体重が基準値から有意に増加した(p<0.0001)が、コントロール群(53.14 ± 11.35→54.19 ± 10.74 kg)に有意な増加はなかった。8週後の脂肪量もコントロール群(16.29 ± 7.14→14.95 ± 7.72 kg)以外のすべてのたんぱく質摂取群(WPC:18.70 ± 7.38→17.16 ± 7.18 kg;Beef:16.43 ± 5.71→14.65 ± 5.41 kg;Chx:17.58 ± 5.57→15.87 ± 6.07 kg)において有意に減少した(p<0.0001)。デッドリフトとベンチプレス両方の最大拳上重量はすべての介入群において基準値より有意に増加した。筋力に関してはグループ間の差はなかった。パワー出力はWPC群においてのみ有意に増加した。


図2. トレーニング後の脂肪量の変化

結論・応用
この研究の結果は、肉やWPCなどからの質の良いタンパク質の摂取はコントロール群に比べて体組成に有意な効果をもたらすことを示した。

オリジナルの文献はこちら

 

グループ間の差異が出ていないことから、質の高いタンパク源は体組成に関して同じような効果をもたらすことが示されています。また、タンパク質の摂取をトレーニング後に行うことで体組成、除脂肪体重はもちろんのこと脂肪量の減量にもつながることが示されたので、ボディビルディングやアスリートだけでなく、減量を目的とした一般の方にもトレーニング後のたんぱく質の摂取が推奨されることがわかりました。

 

参考文献
1. Stark M, Lukaszuk J, Prawitz A, Salacinski A, Protein timing and its effects on muscular hypertrophy and strength in individuals engaged in weight-training. J Int Soc Sports Nutr. 9(54), 2012