HPCスタッフコラム

2019.01.09

適切なスクワットのフォームとは?

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「膝がつま先より前に出ないように!」

スクワットを行っている時このような指示を聞いたことはありませんか?この研究では膝の前方への移動がエクササイズ中の各関節のトルクにどのような影響が出るのかを検証しています。同じスクワットというエクササイズでも身体の一部分の動作が異なることでどのような影響が出るのでしょうか?

 

Effect of Knee Position on Hip and Knee Torques During the Barbell Squat
バーベルスクワットにおける膝のポジションが股関節及び膝関節へ与える影響

Fry, AC, Smith, JC and Schilling, BK

J Strength Cond Res 17(4): 629–633, 2003

目的
バーベルスクワット時に下腿を可能な限り垂直に維持することで膝がつま先よりも前に出ないようにすることが推奨されることもあります。この研究では膝の前方への移動が制限されている場合とそうでない場合の関節のキネティックスを調べた。
*キネティックス:物体の動きや変化における力の変化

被験者
7名のウェイトトレーニングを行う男性(年齢:27.9±5.2歳)でハイバーのパラレルスクワットで少なくとも体重の1.5倍を拳上できる。

方法
被験者は2種類のパラレルバーベルスクワット(重量=体重と同等)の試技中にビデオテープで撮影された。膝がつま先を超えて前方に移動してもよい(制限無)とつま先前に板を立てることで膝のつま先を超えての前方移動を制限したもの(制限有)の2種類を行った。動作中の股関節と膝関節の関節トルクが計算で求められた。

 


図1.制限無のスクワット(左)と制限有のスクワット

結果
両スクワットにおける静的な膝関節と股関節の間のトルク及び、両スクワット間に差異が見られた(p<0.05)。制限無のスクワットの場合、膝関節トルクは150.1±50.8 Nmであり股関節トルクは28.2±65.0 Nmであった。制限有のスクワットでは膝関節が117.3±34.2 Nmで股関節が302.7±71.2 Nmであった。制限有のスクワットは制限無のスクワットと比べて胴体の前傾がより大きく、下腿が垂直に近く、また膝及び足関節の屈曲角度が小さかった。

結論・応用
使用されるスクワットのテクニックは膝関節と股関節間の力の配分及びエクササイズの動作(関節角度)にも影響を与える。膝関節の前方への移動の制限が膝関節への負荷を減らすとしても、力は不適切に股関節や腰部へ転嫁されるであろう。したがって、このエクササイズ中の適切に関節へ負荷をかける場合は、膝がつま先を少し超えて前方へ移動することが必要であろう。

オリジナルの文献はこちら

 

この研究の著者も述べている通り、適切に各関節へ負荷を分配したい場合は膝が少し前へ出ることが必要になってくるでしょう。身長や各部位の長さ(特に大腿部)、筋力や障害などによって適宜フォームを変更していくことが大切であると言えます。たとえば、膝を前に出さないスクワットでは確かに膝関節のトルクが減少しましたが、股関節へのトルクが大きく増加しました。そのため、股関節や腰部の障害を抱える人にはこのようなタイプのスクワットは適していないと言えるでしょう。

スクワットのフォームは一つではなく、エクササイズを行う人の形態や状態、目的に応じて適切に変更することが大切でしょう。