HPCスタッフコラム

2019.01.24

HIIT vs スポーツ特異的ドリル:持久力向上のためのトレーニング

画像

エネルギーシステム(持久系能力)のトレーニングはアスリートにとって重要なトレーニングの一つです。スポーツによって求められるエネルギーシステム(ATP-CP系、解糖系、有酸素系)の配分は異なり、そのため、スポーツによってトレーニングする必要のあるエネルギーシステムは異なります。

スポーツコーチやS&Cの専門家は様々な方法を用いてスポーツ特性に合わせたエネルギーシステムの向上を図ります。それらの方法の例として、長距離走、インターバルトレーニング、サーキットトレーニングなどが挙げられます。また近年ではサッカー等において、フィールドを狭くして少ない人数で行うミニゲームのエネルギーシステムの向上効果が注目されています(1、2、4)。

今回紹介する文献はテニスにおいて、技術的な要素を含むオンコートのトレーニングの効果と高強度のインターバルトレーニングの効果を比較しています。

 

Effects of high-intensity interval training vs. on-court tennis training in young tennis players.
若いテニスプレーヤーにおける高強度インターバルトレーニングとオンコートテニストレーニングの効果の比較

Kilit, B and Arslan, E.

J Strength Cond Res 33(1): 188–196, 2019

目的
この研究は、若いテニスプレーヤーにおいて、6週間の高強度インターバルトレーニング(HIIT:High-Intensity Interval Training)または6週間のコート上のテニストレーニング(OTT:On-court Tennis Training)の精神心理学的な反応、パフォーマンスの反応及び技術的なスコアへの効果を検証することである。

被験者
29名の若い男性テニスプレーヤー(年齢:13.8±0.4歳、身長:159.2±7.5 cm、体重:49.4±6.1 kg)。

方法
被験者は最大酸素摂取量(VO2 max)と技術的なスコアがグループ間で均整がとれるようにHIIT(n=14)またはOTT(n=15)に振り分けられた。両グループともトレーニングを同じ時間だけ行いセッション間に受動的な休息を設けた。介入前後の測定はVO2 max、スプリント、跳躍、400m走のタイム、テニス特異的な技術テスト及びt-ドリルアジリティテストを計測した。。

結果
HIITとOTTのグループのプレーヤはそれぞれ124±18分(60.0 ± 9.2%)と131±16分(64.3 ± 9.7%)を最大心拍数の80~100%の強度でトレーニングした。しかし、RPEのスコアはOTTグループと比較してHIITグループにおいて有意に高かった。
パフォーマンスの方では、両方のトレーニング介入は同等のVO2 maxの向上(HIIT:+5.2%、d=1.36(効果大);OTT:+5.5%、d=1.50(効果大))をもたらした。両方のトレーニング方法は介入前と介入後を比べて有意にスプリントや跳躍パフォーマンスの向上させた(p<0.05、d値範囲:0.40~1.10)。OTTグループはアジリティテストのパフォーマンスと技術スコアにおいて介入後のスコアでHIITグループよりも有意に高いパフォーマンス反応を示した(p<0.05、d値範囲:0.77~0.88(効果中))。対照的に、HIITグループは400mのランニングタイムにおいて介入後のスコアでより有意に高いパフォーマンス反応を示した(p<0.05、d値範囲:1.35(効果大))。

結論・応用
これらの結果は、若いテニスプレーヤーにおいて、テニスに特異的なオンコートドリルの方がより大きな身体的な楽しみを伴ってアジリティや技術的な能力の向上により効果的であると考えられる一方で、HIITはスピードを基本としたエネルギーシステムのトレーニングに適切であるであろうことを示した。

オリジナルの文献はこちら

 

このような研究のように、スポーツに特異的な動作をエネルギーシステム向上のためのトレーニングに組み込みその効果を検証するものが増えてきています。それらの研究ではドリルの形態が実際にスポーツで行われる動作パターンやスピードと類似していても従来のランやスプリントと同様にエネルギーシステムの向上効果があると報告しています(1、2、3、4)。ランニングやスプリントのみのトレーニング方法は場所の制約が少なくまた大人数が一度にトレーニングできるなどのメリットがあります。しかし、スポーツパフォーマンスの向上という最終的な目的を考えたときにはやはり特異的な動作を用いたドリルを行うほうが効果的でしょう。

参考文献
Katis, A., & Kellis, E. Effects of small-sided games on physical conditioning and performance in young soccer players. Journal of sports science & medicine, 8(3), 374-80, 2009
Dellal, A, Chamari, K, Pintus, A, Girard, O, Cotte, T, and Keller, D. Heart rate responses during small-sided games and short intermittent running training in elite soccer players: a comparative study. J Strength Cond Res 22(5): 1449-1457, 2008
Owen, AL, Wong, DP, Paul, D, and Dellal, A. Effects of a periodized small-sided game training intervention on physical performance in elite professional soccer. J Strength Cond Res 26(10): 2748–2754, 2012
Ade, JD, Harley, JA and Bradley, PS. Physiological Response, Time–Motion Characteristics, and Reproducibility of Various Speed-Endurance Drills in Elite Youth Soccer Players: Small-Sided Games Versus Generic Running International Journal of Sports Physiology and Performance, 9, 471 -479, 2014