HPCスタッフコラム

2019.02.06

両側と片側エクササイズの相互作用

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筋力向上には計画的にトレーニングプログラムを変更する必要があり(1)、単一のエクササイズを同じ方法で長期間行ってしまうことで筋力の向上が停滞してしまいます。ベーシックな両側性のエクササイズであるスクワットやデッドリフトはそのベーシックさゆえに繰り返しトレーニングで用いられるエクササイズです。対して、ランジやステップアップ等の片側性のエクササイズは筋力向上の他非対称性の解消等の目的で用いられる場合が多いです。

今回紹介する研究では、両側性及び片側性のそれぞれのエクササイズによる筋力向上の効果と他のエクササイズへのトレーニング効果の移行を調べています。

 

Specificity and transfer of lower-body strength: Influence of bilateral or unilateral lower-body resistance training.
下半身筋力の特異性と移行:両側性または片側性の下半身レジスタンストレーニングの影響

Appleby, BB, Cormack, SJ, and Newton, RU.

J Strength Cond Res 33(2): 318–326, 2019

 

目的
両側性または片側性どちらかのレジスタンストレーニング用いた下半身筋力の向上を調査する。

被験者
発達途上のラグビー選手23名(年齢=22.4±4.1歳(範囲:18~29歳)、身長=185.3±5.5 cm、体重=102.9±12.0 kg 、トレーニング経験=5.4±2.9年、90°スクワット1RM=178±27 kg)及び同レベルのラグビー選手10名(年齢=24.6±5.3歳、身長=183.2±7.4 cm、体重=93.1±10.4 kg)が比較対照として研究に参加した。

方法
被験者は18週の無作為のトレーニング対照研究を完了した。23名の被験者は両側性(BIL、n=13)または片側性(UNI、n=10)に振り分けられトレーニングを行った。8週間のトレーニングフェーズでは週に2回のボリュームの等しい下半身のレジスタンストレーニングセッション(6~8セット×4~8レップ、1RMの45~88%)を行い、両側性(バックスクワット)または片側性(ステップアップ)といったエクササイズ処方のみが唯一異なった。バックスクワットとステップアップの最大筋力(1RM)を無作為の順で測定し、グループ内及びグループ間の差を効果量を指標に分析した(ES±90%の信頼限界(CL))。

結果
両トレーニンググループは各々のトレーニングしたエクササイズにて実用的に重要な向上を示し(効果量±90% CL:BIL=0.67±0.48;UNI=0.74±0.38)、またもう一方のエクササイズへの移行も見られた(効果量±90% CL:BILステップアップ=0.27±0.39;UNIバックスクワット0.42±0.39)。スクワットの1RMにおいては、研究のどの地点でもBILとUNIの間の差は明確ではなかったが(効果量=-0.34±0.55)、一方で8週間のトレーニング介入中のステップアップの1RMの平均筋力においてはBILとUNIを比較したときに小さな差が見られた(UNI>BIL、効果量=0.41±0.36)

結論・応用
この結果は下半身の筋力の向上は両側性または片側性のレジスタンストレーニングを用いることで達成でき、筋力の向上はトレーニングをしていない動作でも表れ、これは同様の関節動作と筋を動員するエクササイズ間での筋力トレーニングの効果が移行することを支持している。両側性のトレーニングの処方が抑制されるときには片側性の筋力トレーニングを組み入れることも選択肢に入れることができるであろう。

オリジナルの文献はこちら

 

スクワットは間違いなく下半身の筋力向上に最も適したエクササイズの一つですが、同時に高重量を扱うため脊柱にかかる負荷も大きくなります。そのため、腰痛など脊柱に障害を抱える場合は、片側性のエクササイズを行うことで対象の筋群への効果はそのままに脊柱への負荷を減少させることもできます。今回の研究の結果は、片側性のエクササイズを行うことで対象の筋群の筋力の向上はもちろん、両側性であるスクワットへの筋力の移行も起きることを示しました。

そのため、高負荷の両側性のエクササイズを長期にわたって行ってきた後に脊柱への負荷を減らしつつトレーニング強度を保ちたい場合や、スポーツにおいてはインシーズン等脊柱にかかる負荷を減らしたい場合など、多くのシチュエーションで片側性のエクササイズを活用できるでしょう。

 

参考文献
1. Kraemer, W. J., & Ratamess, N. A. (2004, April). Fundamentals of Resistance Training: Progression and Exercise Prescription. Medicine and Science in Sports and Exercise.