HPCスタッフコラム

2019.02.28

ジャンプパフォーマンスのためのレッグプレスとスクワットのトレーニング効果

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下肢の伸展筋の筋力を向上させるエクササイズとしてスクワットやレッグプレスが挙げられます。どちらのエクササイズも筋力の向上に関しては有効的です。スクワットは脊柱に負荷のかかるストラクチュラルエクササイズであり、そのため脊柱を支える筋群の発達も期待できます。一方でレッグプレスは背もたれによって上体が固定できるため、脊柱を支える筋群が制限となることなく下肢の筋によって筋力が発揮できます。

同じ下肢の伸展筋群のトレーニングであるスクワットとレッグプレスですが、これらのエクササイズによる筋力の向上がスポーツパフォーマンスの重要な指標であるジャンプのパフォーマンスに対してそれぞれどのような影響を与えるかを検証した研究を紹介します。

 

The impact of back squat and leg-press exercises on maximal strength and speed-strength parameters.
最大筋力とスピード筋力のパラメタ―に対するバックスクワットとレッグプレスの影響

Wirth, K, Hartmann, H, Sander, A, Mickel, C, Szilvas, E, and Keiner, M.

J Strength Cond Res 30(5): 1205–1212, 2016

目的
スピード筋力における筋力トレーニングによる増加は疑う余地のないもと思われる。トレーナーやアスリートにおいては、競技のための準備段階における最も効率的なエクササイズの選択は興味深いことである。したがって、この研究ではトレーニングエクササイズの選択が8週間のトレーニング介入においてスピード筋力及び最大筋力の発達に対してどのように影響するかを調べた。

被験者
78人の学生が研究に参加した(トレーニング群39名、コントロール群39名)

方法
両グループはさらに2つのサブグループに分かれた。1つ目のトレーニンググループ(スクワット・トレーニンググループ(SQ))は8週間の筋力トレーニングにおいてパラレルスクワットを用いた。2つ目のトレーニンググループ(レッグプレス・トレーニンググループ(LP))は同じ8週間のトレーニングにおいてレッグプレス(45°レッグプレス)を用いた。コントロール群はSQまたはLPのコントロールとして2つのサブグループに分けられた。すべてのグループ間の比較及びプレテストとポストテストの結果の比較に対して繰り返しのある二元配置分散分析を用いた。

結果
SQ群はスクワットジャンプ(SJ、12.4%)と反動を使ったジャンプ(CMJ、12.0%)のジャンプパフォーマンスにおいて統計的に有意な向上を示した(p≤0.05)。一方で、LP群の変化は統計的な有意水準には達さず、SJで3.5%、CMJで0.5%の向上となった。ポストテストにおけるグループ間の差は統計的に有意であった(p≤0.05)。また、スクワットエクササイズはドロップジャンプのパフォーマンスの向上により効果的であることの兆候がみられた。

結論・応用
したがって、短期間の介入において、レッグプレスと比較してスクワットエクササイズはSJ、CMJ及びリアクティブ・ストレングス・インデックス(Reactive Strength Index:RSI)をより効果的に向上させた。その結果として、もし筋力トレーニングの目的がジャンプパフォーマンスの向上であれば、より優れたトレーニング効果の移行があるスクワットを選ぶべきである。

オリジナルの文献はこちら

 

両エクササイズとも、8週間のトレーニングによって有意に筋力を向上させたのにもかかわらず、ジャンプパフォーマンスを有意に向上させたのはスクワットを行ったグループのみでした。また、レッグプレスにおいてはドロップジャンプ中の接地時間を増加させる傾向も見られ、それによるRSIの低下も見られました。筆者らは、姿勢を安定させるための体幹筋群の筋力によってこの違いが出たのではないかと述べています。

ジャンプパフォーマンスというスポーツにおいて重要な能力に関してはレッグプレスよりもスクワットが有効であることを示す興味深い研究でもありますが、跳躍動作中に姿勢を維持するための体幹筋群がパフォーマンスに影響を及ぼすことを示唆するものでもありました。スポーツパフォーマンスにおいては、各部位のみの筋力の向上だけでなく、他部位との協調性やバランスのとれた筋力の向上が重要であることを間接的に示す研究でもあります。