HPCスタッフコラム

2019.03.28

レジスタンストレーニングとプライオメトリックの比較

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レジスタンストレーニングを行うことで筋力の向上や筋肥大の効果をもたらすことは周知のこととなっています。レジスタンストレーニングの効果は多くの研究で証明され、またその汎用性も高く様々な身体能力を向上させるために利用できますが、同時に施設や設備と言ってハード面で実施困難な場合がまだまだ多いと感じます。

プライオメトリックトレーニングは適切な処方と実施により、跳躍力やスプリント能力を向上させます(1、2)。このタイプのトレーニングは適切な地面とプログレッション/リグレッション(漸進/減退)についての知識があれば特別な器具などを用いずとも普段スポーツのトレーニングを行っている場所(グラウンドや体育館等)で実施が可能です。

今回紹介する研究はこれら二つのトレーニング方法を一般の男性に処方し、様々な身体能力要素に対する影響を検証し比較しています。

 

A comparison of the effects of short-term plyometric and resistance training on lower-body muscular performance.
下肢筋群のパフォーマンスに対する短期間のプライオメトリックスとレジスタンストレーニングの効果の比較

Whitehead, MT, Scheett, TP, McGuigan, MR, and Martin, AV.

J Strength Cond Res 32(10): 2743–2749, 2018

目的
この研究の目的は、下肢筋群のパフォーマンスに対する短期間のプライオメトリックスとレジスタンストレーニングの効果を比較することである。

被験者
30名の男性(年齢:21.3±1.8歳、身長:177.3±9.4 cm、体重80.0±2.6 kg、体脂肪率:16.1±1.2%、バックスクワット1RMの体重比:1.40±0.3)

方法
30名の男性がこの研究に参加した。参加者はグループに分配され、8週にわたって漸進的なプライオメトリック(PLT、n=10)またはレジスタンストレーニング(SRT、n=10)を週に2回行うグループか、トレーニングを行わないコントロール群(CNT、n=10)に振り分けられた。パフォーマンスの測定がトレーニング期間の前と後に行われ、測定には高速度の筋力発揮(立ち幅跳び及び垂直跳び)、低速度の筋力発揮(バックスクワットの最大拳上重量(1RM))、ランニングスピード(20mスプリント)及びアジリティ(505アジリティテスト)が含まれた。分散分析後に事後分析を行いグループ間の有意差を求めた。すべての分析における有意レベルはp≤0.05とした。

結果
PLTグループにおいて、CNT群と比較して立ち幅跳び、垂直跳び、1RMバックスクワット、SRTと比べて垂直跳びで有意な向上が見られた。SRT群ではCNT群と比較して1RMバックスクワットにおいて有意な向上が見られた。20mスプリント及び505アジリティテストにおいてはどのグループ間においてもトレーニング後の有意な差は見られなかった。

結論・応用
これらのデータは8週間の漸進的なプライオメトリックのトレーニングは高速度及び低速度の筋発揮のパラメタ―を向上させたが、スピードやアジリティには明らかな変化は見られなかった。さらに、8週間の漸進的なプライオメトリックトレーニングによる低速度の筋力発揮の向上は8週間の漸進的なレジスタンストレーニングと同等であった。

オリジナルの文献はこちら

 

この研究に参加した被験者のバックスクワットの最大拳上重量の平均は100㎏前後とアスリートとしては高い方ではありませんが、レジスタンストレーニング経験の少ない男性や高校や大学生においてこの研究結果を反映させることができるのではないでしょうか。施設や設備面が十分でない場合において、スポーツのトレーニング以外でプライオメトリックを実施し筋力や跳躍能力を向上させることができるでしょう。しかしながら、今回の研究では筋肥大についての検証は行われておらず、また他の研究でもプライオメトリックによる筋肥大の効果は一致していません(3、4)。そのため、プライオメトリックのトレーニングのみで筋肥大が必要な選手やクライアントに対してプログラムを作成するうえでは注意が必要です。

いずれにせよ、跳躍力や筋力の向上を目的としたとき、今回の被験者に似た特徴(筋力レベルやトレーニング経験)を持つ人に対しては漸進的なプライオメトリックのトレーニングを用いることができるでしょう。

 

参考文献
De Villarreal, E. S. S., Kellis, E., Kraemer, W. J., & Izquierdo, M. (2009). Determining variables of plyometric training for improving vertical jump height performance: A meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research, 23(2), 495–506
De Villarreal, E. S., Requena, B., & Cronin, J. B. (2012). The effects of plyometric training on sprint performance: A meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research, 26(2), 575–584
Markovi, G., Juki, I., Milanovi, D., & Metikos, D. (2005). Effects of sprint and plyometric training on morphological characteristics in physically active men. Kinesiology, 37(1), 32–39
Vissing, K., Brink, M., Lønbro, S., Sørensen, H., Overgaard, K., Danborg, K., … Aagaard, P. (2008). Muscle adaptations to plyometric vs. resistance training in untrained young men. Journal of Strength and Conditioning Research, 22(6), 1799–1810