HPCスタッフコラム

2019.09.12

思春期年代のラグビー選手におけるレジスタンストレーニング

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ラグビーはコリジョンスポーツの一つであり、様々な身体要素が必要とされます。筋力をはじめ、筋パワーや有酸素及び無酸素性の持久力、スピード、さらには身体のサイズなどが高い競技レベルにおける重要な要素であり(1)、レジスタンストレーニングを含む戦略的なストレングス&コンディショニングプログラムは必要不可欠と言えるでしょう。これは若い年代の競技レベルにおいても同様でしょう。思春期年代のアスリートにおいて、レジスタンストレーニングの実施は筋パワーや動作スキルの向上につながり、したがってスポーツパフォーマンス向上に有効的であるとされています(2)。

今回紹介する研究は、トレーニング変数(トレーニング頻度やボリューム、エクササイズの選択等)がどのように思春期のラグビープレーヤの身体特性の変化に関係しているかを検証しています。

 

Strength and conditioning practices in adolescent rugby players: relationship with changes in physical qualities.
思春期のラグビー選手におけるストレングス&コンディショニングの実践:身体要素の変化に関連して

Weakley, JJS, Till, K, Darrall-Jones, J, Roe, GAB, Phibbs, PJ, Read, DB, and Jones, BL.

J Strength Cond Res 33(9): 2361–2369, 2019

目的
思春期のラグビー選手はレジスタンストレーニングの実施によって恩恵を受けることができる。しかし、レジスタンストレーニングの実施が短期的な身体の変化にどのような影響を与えるかは知られていない。したがって、この研究の目的は、思春期のラグビー選手の12週間において、レジスタンストレーニングの実施を数値化し、身体の発達を評価し、そしてこれらの変化をレジスタンストレーニングに関連する変数と関連づけることである。

被験者
16歳から18歳までの男子ラグビー選手35名(年齢:16.9 ± 0.4歳、身長:1.78 ± 0.07 m、体重:80.1 ± 10.5 kg)

方法
35名の思春期の男子ラグビー選手が本研究に参加し、被験者として体型および身体の一連の測定を12週間のインシーズンのメゾサイクルの前後に実施した。被験者は、12週間の間、セッションごとにレジスタンストレーニングの頻度、実施エクササイズ、回数、負荷、時間、そして自覚的運動強度を、週間トレーニング記日誌を用いて記録した。対応のあるt検定及びコーヘンのd効果量を用いて変化を評価し、同時にピアソンの相関係数で変数間の関係性を評価した。

結果
レジスタンストレーニングの実施状況は個々で様々であったが、体重、反動を用いた垂直跳び(CMJ:Counter Movement Jump)の跳躍高、フロントスクワット、ベンチプレス、そして懸垂の筋力において有意な(p≤0.05)の向上を示した。レジスタンストレーニングのボリュームは、CMJ(r=0.71)、懸垂(r=0.73)、そしてベンチプレス(r=0.45)の変動と中程度から強い有意な関係性があった。上半身または下半身の複合エクササイズの頻度は、CMJ(r=0.68)、懸垂(r=0.65)、そしてベンチプレス(r=0.41)の変動と中程度から大きな有意な関係性があった。

結論・応用
12週間のインシーズン期間を通して、思春期のラグビー選手は様々なレジスタンストレーニングを実施し、体型的及び身体的特性が向上したように思われる。結果に示された関係性から、フリーウェイトの複合エクササイズの実施において負荷ボリュームを増加させることは、若いラグビー選手の身体要素を向上させる効果的な方法であるといえる。

オリジナルの文献はこちら

 

この研究では、トレーニングプログラム自体がコントロールされたわけではなく、12週間のインシーズンにおけるトレーニングの実施状況を記録し、その記録とこの期間の前後で行われた測定の変動の関係性を探ったものです。そのため、トレーニングの実施状況は選手個々、または学校単位で異なり、週当たりのトレーニング実施日や、エクササイズの選択、強度やボリューム、さらにはスポーツのトレーニング量なども様々でした。そのような中でも、全体的に体重や垂直跳びの跳躍高や筋力が向上しており、インシーズン中にパワーや筋力を維持・向上させるためにはレジスタンストレーニングが有効であることを示しています。

また、インシーズン中の垂直跳びの向上には下半身の複合エクササイズの負荷ボリュームとエクササイズの数が大きく関係しているようです(それぞれ、r=0.74とr=0.68)。反対に、スクワットの拳上重量は期間を通して向上したものの(効果量(ES:Effect Size)=0.63)、筋力(スクワットの重量)に関しては有意に関係する項目が見られませんでした。またスピードに関しても、シーズンを通して変化は小さく、さらに有意な相関のある項目は見られないことから、これらの要素を向上・維持させるにはまた別な要素が関係していることが考えられます。

思春期のラグビー選手において、競技において重要な要素である体重や筋力、パワーを向上・維持し、それによってラグビーのパフォーマンスを向上させるためにレジスタンストレーニングは有効な手段と言えるでしょう。

 

参考文献
1. Duthie, G., Pyne, D., and Hooper, S. (2003). Applied Physiology and Game Analysis of Rugby Union. Sports Medicine 33, 973–991
2. Harries, S. K., Lubans, D. R., & Callister, R. (2012). Resistance training to improve power and sports performance in adolescent athletes: A systematic review and meta-analysis. Journal of Science and Medicine in Sport, 15(6), 532-540