HPCスタッフコラム

2019.12.20

アシステッドまたはレジステッドジャンプの効果

画像

垂直飛びのパフォーマンス向上にはスクワットのようなレジスタンストレーニングに始まり、プライオメトリックス、オリンピックリフティングなどのパワートレーニングまで様々な方法が効果的とされています。今回紹介する研究に関係した、負荷を用いた(レジステッド)ジャンプを用いたトレーニング効果を検証した研究も多数あります(1、2、3、4)。エキセントリック局面にだけ体重の20%~30%の負荷をかけることでその後のコンセントリック局面のパワーや跳躍高が向上するという報告もあります(8)。

メカニクスは異なりますが、スプリント能力の向上を目的としたトレーニングにおいてもレジステッドスプリントに加えてアシステッドスプリントのトレーニングが行われ、両方の方法においてその効果が実証されています(5)。

今回紹介する研究は、レジステッドジャンプに加えてアシステッドジャンプのトレーニング効果を検証するだけでなく、それぞれのジャンプのキネティックスも分析しています。
*キネティックス:運動を起こすための力を考察する力学の部門

 

Kinetic and training comparisons between assisted, resisted, and free countermovement jumps.
アシステッド、レジステッド、および自体重のカウンタームーブメントジャンプ間のキネティックスとトレーニングの比較

Argus, CK, Gill, ND, Keogh, JWL, Blazevich, AJ, and Hopkins, WJ.

J Strength Cond Res 25(8): 2219-2227, 2011

目的
バンドを用いたアシステッドおよびレジステッドジャンプのトレーニングは下半身のパワーを向上させる新しい方法になりえる。この研究の目的は;a)アシステッド、自体重、およびレジステッドカウンタームーブメントジャンプのキネティックスの違いを明らかにし、b)トレーニング経験の多いアスリートにおいて、垂直飛びのパフォーマンスに対するアシステッド、自体重、またはレジステッドカウンタームーブメントジャンプのどれかを用いたコントラストトレーニングの効果を検証することである。

方法1
第1部では8名の娯楽的にトレーニングを行う男性(年齢:27.5 ± 5.5歳、身長:179.9 ± 4.9 cm、体重:84.2 ± 14.3 kg)において3種類のジャンプ中の力の出力、相対的なピークパワー、および最大速度を評価した。

結果1
最も大きな力はレジステッドジャンプにおいて発揮され、一方で相対的なピークパワーおよび最大速度はアシステッドジャンプにて最大であった。各種類のジャンプは異なるパターンの測定項目の最大値を示し、これはそれぞれが筋パワーの異なる構成要素を向上させることを示唆している。

方法2
第2部では、28名のプロラグビー選手の垂直飛びの跳躍高を、4週間のアシステッド(n=9)、レジステッド(n=11)、または自体重(n=8)のどれかのカウンタームーブメントジャンプトレーニングの前後に評価した。

結果2
コントロール群の変化(1.3 ± 9.2%)と比較して、明確な小さな跳躍高の向上がアシステッド(6.7 ± 9.6%)およびレジステッド(4.0 ± 8.8%)ジャンプのトレーニング群に見られた。バンドを用いたアシステッドおよびレジステッドジャンプトレーニングは、両方とも跳躍高を向上させる効果的な方法であり、コントラストトレーニング法やプライオメトリックストレーニングの一部として現在のトレーニングプログラムに簡単に組み入れることができるであろう。

結論・応用
アシステッドおよびレジステッドジャンプトレーニングは、ジャンプやスプリントのような爆発的な下半身の動作が競技の一部として行われるアスリートにおいて推奨される。

オリジナルの文献はこちら

 

この研究でもレジステッドジャンプだけでなく、アシステッドジャンプの効果が示されました。またメカニクスの違いも明らかになりました。この研究や他の研究ではレジステッドジャンプは力やパワーの向上に効果的であり、また力の発揮率の向上も望めることが示されています(2、4)。そのため、レジステッドジャンプは、跳躍パフォーマンスの向上だけでなく、よりパワーや力発揮が必要とされる競技に対して有効的であると考えられます。

対して、アシステッドジャンプは跳躍パフォーマンスの向上に加え、主に速度の向上が望めるようです(4、6)。そのため、より高速度の動作が求められるようなスプリントなどに有効的ではないでしょうか。また興味深いことに、アシステッドジャンプは、カウンタームーブメントジャンプの予備動作中の重心の変位が大きく増加するとの報告があります(1、4)。この論文の著者らは、メカニクスが変化することによって筋力発揮などのキネティックスが改善することで跳躍のパフォーマンスが向上しているからであるとしています。実際に、アシステッドジャンプのトレーニングではパワーは変化しないか、または低下することが示されています(1、6)。さらにTranら(6)は、アシステッドジャンプはトレーニング経験のある人にのみ効果的であると述べています。

レジステッドジャンプおよびアシステッドジャンプは両方とも跳躍のパフォーマンスを向上させるのに効果的ですが、向上させるメカニズムは異なるようで、そのため競技や目的に合わせてこれらのジャンプを使い分けるのが望ましいでしょう。

 

参考文献
1. Markovic, S., Mirkov, D. M., Knezevic, O. M., & Jaric, S. (2013). Jump training with different loads: Effects on jumping performance and power output. European Journal of Applied Physiology, 113(10), 2511–2521
2. Rhea, M. R., Peterson, M. D., Oliverson, J. R., Ayllón, F. N., & Potenziano, B. J. (2008). An examination of training on the vertimax resisted jumping device for improvements in lower body power in highly trained college athletes. Journal of Strength and Conditioning Research, 22(3), 735–740
3. Swinton, P. A., Stewart, A. D., Lloyd, R., Agouris, I., & Keogh, J. W. L. (2012). Effect of load positioning on the kinematics and kinetics of weighted vertical jumps. Journal of Strength and Conditioning Research, 26(4), 906–913
4. Markovic, G., Vuk, S., & Jaric, S. (2011). Effects of jump training with negative versus positive loading on jumping mechanics. International Journal of Sports Medicine, 32(5), 365–372
5. Upton, D. E. (2011). The effect of assisted and resisted sprint training on acceleration and velocity in Division IA female soccer athletes. Journal of Strength and Conditioning Research, 25(10), 2645–2652
6. Tran, T.T., Brown, L.E., Coburn, J.W., Lynn, S.K., and Dabbs, N.C. (2012). Effects of assisted jumping on vertical jump parameters. Current Sports Medicine Reports 11, 155–159
7. Sheppard, J. M., Dingley, A. A., Janssen, I., Spratford, W., Chapman, D. W., & Newton, R. U. (2011). The effect of assisted jumping on vertical jump height in high-performance volleyball players. Journal of Science and Medicine in Sport, 14(1), 85–89
8. Aboodarda, S. J., Yusof, A., Osman, N. A. A., Thompson, M. W., & Mokhtar, A. H. (2013). Enhanced performance with elastic resistance during the eccentric phase of a countermovement jump. International Journal of Sports Physiology and Performance8(2), 181–187