HPCスタッフコラム

2020.07.10

スポーツトレーニングと並行したプライオメトリックトレーニング:いつ実施する?

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プライオメトリックトレーニングは筋パワーの向上を主な目的として行われ、結果として跳躍やスプリント、アジリティなどのパフォーマンスの向上につながります(1)。筋パワーの出力を最大化しトレーニング効果を高めるために、通常プライオメトリックトレーニングは筋が疲労していないウォームアップ直後や、レジスタンスエクササイズやスポーツトレーニングの前に行われることが一般的です。しかしながら、スケジュールなどの都合でトレーニング後にプライオメトリックトレーニングを行わなくてはならないケースもあるでしょう。Matavuljらの研究(2)では、バスケットボール選手のスポーツトレーニング後にプライオメトリックトレーニングを行ったところ、跳躍のパフォーマンスが有意に向上したと報告されています。そのため、スポーツのトレーニング後にプライオメトリックを行っても跳躍パフォーマンスの向上は期待できるようです。

そこで、今回紹介する研究では、プライオメトリックトレーニングをトレーニングの前に行うグループと後に行うグループにおいて跳躍やスプリントパフォーマンスに対する効果を比較しています。

 

Sequencing effects of plyometric training applied before or after regular soccer training on measures of physical fitness in young players.
若年選手の身体フィットネル値に対する通常のサッカーのトレーニングの前か後に行ったプライオメトリックトレーニングの順番の影響

Ramirez-Campillo, R, Alvarez, C, Gentil, P, Loturco, I, Sanchez-Sanchez, J, Izquierdo, M, Moran, J, Nakamura, FY, Chaabene, H, and Granacher, U.

J Strength Cond Res 34(7): 1959–1966, 2020

目的
サッカーの練習の前(PJT-B)または後(PJT-A)に行った短期間(7週間)のプライオメトリックジャンプトレーニングが若年サッカー選手の身体フィットネス要素に与える効果を比較すること。単純盲検無作為対照化試験で行った。

被験者
思春期後の男性サッカー選手(17.0±0.5歳)38名

方法
被験者は3つのグループに振り分けられた:PJT-B(n=12)、PJT-A(n=14)、コントロール(CON;n=12)。評価項目として、20m走スピード、立ち幅跳び(SLJ)、スクワットジャンプ(SJ)、反動を用いた垂直飛び(CMJ)、ドロップジャンプ(DJ)、20mマルチステージシャトルラン(MSSRT)およびイリノイ方向転換走スピード(ICODT)の評価の測定が含まれた。CON群はサッカーの競技トレーニングを行ったが、PJT-A群およびPJT-B群は同じ競技練習を行ったが、その時間のうちの11%までをプライオメトリックトレーニングに置き換えた。PJT-B群はプライオメトリックエクササイズをウォームアップ後に行い、PJT-A群はプライオメトリックエクササイズをサッカーのトレーニング終了後10分以内に行た。トレーニング期間前後の測定におけるすべての変数のグループ間の差を検出するために分散分析を行った。

結果
全ての測定項目にて、時間の主作用(すべてのp<0.01;d=0.19~0.79)および群×時間の相互作用(すべてのp<0.05;d=0.17~0.76)が見られた。事後分析によって、PJT-B群(SLJ:9.4%、d = 1.7;CMJ:11.2%、d = 0.75;MSSRT:9.0%、d = 0.77)とPJT-A群(SLJ:3.1%、d = 0.7;CMJ:4.9%、d = 0.27;MSSRT:9.0%、d = 0.76)に有意な向上が見られた。また、事後分析によってPJT-B群に有意な向上も見られた(20m走タイム:−7.4%,、d = 0.75;20-cm DJリアクティブストレングスインデックス:19.1%、d = 1.4;SJ:6.3%, d = 0.44;ICODT:−4.2%、d = 1.1)。

結論・応用
総じて、この研究では、若年男性サッカー選手に対してプライオメトリックトレーニングは、通常のサッカーのトレーニングと組み合わせることで身体フィットネス要素の向上に効果的であることが示された。より具体的には、プライオメトリックトレーニングがサッカーの競技練習の前に行われた場合により大きなトレーニングによる効果が現れた。

オリジナルの文献はこちら

 

立ち幅跳び(SLJ)、反動を用いた垂直飛び(CMJ)およびマルチステージシャトルラン(MSSRT)のパフォーマンスに対しては、両グループにおいてパフォーマンスの向上が示されました。SLJに対してはトレーニング前にプライオメトリックトレーニングを行った(PJT-B)群の効果量が1.7とプライオメトリックトレーニングの効果が高いことが示されました。Matavuljら(2)と同様に跳躍のパフォーマンスに対しては、スポーツのトレーニング後にプライオメトリックトレーニングを行っても効果的であるようです。

しかし、PJT-B群は前述の項目に加え、20mスピード、リアクティブストレングスインデックス、スクワットジャンプおよびアジリティのパフォーマンスを有意に向上させました。リアクティブストレングスインデックスおよびアジリティの効果量はd>1.0と、プライオメトリックトレーニングの高い効果を示しました。

これらの結果から、スポーツのトレーニングと並行しながらスピードや跳躍、アジリティ、さらには持久系のパフォーマンスを向上させたい場合はウォーアップ直後にスポーツのトレーニングが始まる前にプライオメトリックトレーニングトレーニングを導入することが効果的であるといえるでしょう。

 

参考文献
1. Haff, GG and Triplet, NT (2016) Essentials of Strength Training and Conditioning, Fourth Edition, Champaign, IL: Human Kinetics
2. Matavulj, D., Kukolj, M., Ugarkovic, D., Tihanyi, J., & Jaric, S. (2001). Effects of plyometric training on jumping performance in junior basketball players. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness, 41(2), 159–164