HPCスタッフコラム

2020.10.05

レジスタンストレーニングからの回復はセットの構成によって変化する

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レジスタンストレーニングは身体に急性的な様々な反応を引き起こします。筋機能の低下をはじめ、様々なホルモンも分泌されます。このような反応は、レジスタンストレーニングの強度やボリュームなどに左右され、長期的な身体の適応にも影響をおよぼします(1)。強度に関しては、エクササイズの強度が高いほどトルクの低下(2)や筋の膨張(3)が起こり、またクレアチンキナーゼなどの酵素の分泌も多くなる傾向がありました(3)。他にも挙上速度(4)やレップ数(5、6)によってエクササイズ後の筋機能やホルモンや酵素の分泌量に影響を与えると報告されています。レップ数に関してはより挙上限界まで上げる、または挙上限界を超えて行った場合(フォースドレップ)により大きな反応が報告されています。

異なるセット構成によるトレーニングによって身体がどのように反応し、またそこからの回復がどのように起こるか?今回紹介する研究は、レップ数をさらに詳細に変化させ、それぞれに対する急性的な反応とそこからの回復過程を比較しています。

 

Time course of recovery from resistance exercise with different set configurations.
様々なセット構成でのレジスタンストレーニングからの回復の推移

Pareja-Blanco, F, Rodríguez-Rosell, D, Aagaard, P, Sánchez-Medina, L, Ribas-Serna, J, Mora-Custodio, R, Otero-Esquina, C, Yáñez-García, JM, and González-Badillo, JJ.

J Strength Cond Res 34(10): 2867–2876, 2020

目的
この研究は、推定最大レップ数(P)を考慮した様々な1セット当たりのレップ数(R)による10種類のレジスタンストレーニングの方法に対する反応を分析した。

被験者
2~4年のレジスタンストレーニング経験のある10名の男性(年齢22.1±3.5歳、範囲18~27歳、身長1.75±0.07 m、体重73.5±10.7 kg)

方法
10名の男性が10種類のプロトコルを行った(R:セット当たりのレップ数(P:推定最大レップ数):6(12)、 12(12)、 5(10)、 10(10)、 4(8)、 8(8)、 3(6)、 6(6)、 2(4)、そして4(4)。各プロトコルにてベンチプレスとスクワットを5分間のセット間休息を挟んで3セット行った。力学的な筋機能(反動を用いた垂直飛び高と1 m/sとなる負荷(V1-load)の速度)および生化学的な血漿プロフィル(テストステロン、コルチゾール、成長ホルモン、プロラクチン、IGF-1、およびクレアチンキナーゼ)をエクササイズ前24時間からエクササイズ48時間の間に複数回評価した。
*解説:推定最大レップ数はある重量での最大反復回数のことである。Pの値が12であれば、12RM、6であえば6RMを指す。12(12)の場合は12RMの重量で12回、または挙上限界まで行うことを、4(8)は8RMの重量で4レップ行うことを表している。

結果
挙上できなくなるまで行ったプロトコル、特に行ったレップ数が多いもの、は筋機能の多筋低下が起こり、それは最大でエクササイズ後48時間まで持続した。挙上できなくなるまで行ったプロトコルは血漿成長ホルモン、IGF-1、プロラクチン、およびクレアチンキナーゼの濃度のより大きな上昇も示した。

結論・応用
結論として、挙上できなくなるまで行うレジスタンスエクササイズはより大きな疲労の蓄積とより遅い神経筋の回復率に加え、特にセットにおける最大反復回数が大きい場合により大きなホルモンの反応とより大きな筋損傷につながった。

オリジナルの文献はこちら

 

この研究でも筋機能の低下は同じ強度のセット構成でも挙上できなくなるまで行うセット構成によるほうが大きく、またホルモンなどの分泌物もそのセット構成のほうがより多く増加しました。これらの発見はAhtiainenら(5)やMorán-Navarro(6)の研究結果と一致しており、より多くのボリュームを行うセット構成のほうが回復に時間を要するようです。CMJやスクワットの筋力は、挙上限界まで行ったトレーニング後は24時間後でもトレーニング前の値には戻らず(p<0.05)、また、サンプル数が10人と少ないため有意性は確認できませんでしたが、48時間後でももとの数値には戻っていませんでした。このことから、挙上限界まで行うようなセット構成でトレーニングを行うと少なくとも48時間以上の回復が必要であることが示唆されます。

逆に、強度が高くとも、推定最大レップ数の半分ほどで行うセット構成でのトレーニングでは、24時間後にはCMJや筋力の数値がトレーニング前の値に戻っていました。スポーツのインシーズンやトレーニング頻度が高い場合は、このようなセット構成を用いることで、連日強度の高いトレーニングが可能となるかもしれません。

トレーニング頻度や、練習やトレーニングなどのスケジュールによってセット構成を変更することで、パフォーマンス落とすことなく、また疲労を蓄積させずにレジスタンストレーニングを行うことができるかもしれません。

 

参考文献
1. Bird, S.P., Tarpenning, K.M., and Marino, F.E. (2005). Designing resistance training programmes to enhance muscular fitness: A review of the acute programme variables. Sports Medicine 35, 841–851
2. Orssatto, L.B. da R., Moura, B.M. de, Bezerra, E. de S., Andersen, L.L., de Oliveira, S.N., and Diefenthaeler, F. (2018). Influence of strength training intensity on subsequent recovery in elderly. Experimental Gerontology 106, 232–239
3. Hasenoehrl, T., Wessner, B., Tschan, H., Vidotto, C., Crevenna, R., and Csapo, R. (2017). Eccentric resistance training intensity may affect the severity of exercise induced muscle damage. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness 57, 1195–1204
4. Ide, B.N., Leme, T.C.F., Lopes, C.R., Moreira, A., Dechechi, C.J., Sarraipa, M.F., Damota, G.R., Brenzikofer, R., and MacEdo, D.V. (2011). Time course of strength and power recovery after resistance training with different movement velocities. Journal of Strength and Conditioning Research 25, 2025–2033
5. Ahtiainen, J.P., Pakarinen, A., Kraemer, W.J., and Häkkinen, K. (2003). Acute hormonal and neuromuscular responses and recovery to forced vs. Maximum repetitions multiple resistance exercises. International Journal of Sports Medicine 24, 410–418
6. Morán-Navarro, R., Pérez, C.E., Mora-Rodríguez, R., de la Cruz-Sánchez, E., González-Badillo, J.J., Sánchez-Medina, L., and Pallarés, J.G. (2017). Time course of recovery following resistance training leading or not to failure. European Journal of Applied Physiology 117, 2387–2399