HPCスタッフコラム

2020.10.19

コア(体幹)機能の向上方法

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コア・体幹の安定性の向上はスポーツのパフォーマンスの向上につながるだけでなく(2)、下肢の傷害の予防にもつながる(1、2)とされています。McGillによると(3)、コアのスティフネス(剛性)を向上させることで、近位が安定し遠位の力やパワーの出力が向上したり、また脊柱を筋で安定させることで耐荷重が増え、ねじれやゆがみを起こりにくくなったりするのです。

しかし、コアのスティフネスを向上させるための方法についてはまだまだ多くの議論がなされており、最適なトレーニング方法は明確になっていません。コアのトレーニングとしてシットアップやクランチなどのダイナミックなエクササイズやプランクをはじめとするアイソメトリックなエクササイズがあげられます。

今回紹介する研究は、長期的なコアのダイナミックまたはアイソメトリックトレーニングのどちらがコアのスティフネスの向上に適しているかを検証しています。

 

Effect of long-term isometric training on core/torso stiffness.
長期的なアイソメトリックトレーニングがコア/体幹のスティフネスに与える影響

Lee, BCY and McGill, SM.

J Strength Cond Res 29(6): 1515–1526, 2015

目的
コアのスティフネスはスポーツパフォーマンス特性を向上させるが、アイソメトリックまたはダイナミックコアトレーニング方法の効果に関しては論争が起こっている。この研究は、長期的なスティフネスの変化はトレーニングすることができるかどうか、またそうであれば、最も効果的な方法が何であるかを判断することを目的とした。

被験者
24名の健康的な男性被験者(23±3歳、1.8±0.06 m、77.5±10.8 kg)

方法
24名の男性被験者が、6週間のコアトレーニング介入の前後の受動的および能動的なスティフネスの測定に参加した。12名の被験者(22±2歳、1.8±0.08 m、78.3±12.3 kg)は身体およびコアエクササイズに対して未経験であると判断された。他の12名(24±3歳、1.8±0.05 m、76.8±9.7 kg)はムエタイの選手(経験方法な)であった。繰り返し測定を行う方法でコアトレーニング方法(アイソメトリックvsダイナミック、コントロール群を伴う)および、被験者のトレーニング経験(未経験vs経験者)を6週間のトレーニング期間の前後で比較した。受動的なスティフネスは、「摩擦抵抗のない」屈曲の機器を用いて評価し、能動的なスティフネスはクイックリリースの仕組みを通して評価した。

結果
受動的なスティフネスはアイソメトリックトレーニングのプロトコル後に上昇した。ダイナミックトレーニングの効果は小さく、予期されたように、コントロール群には変化は見られなかった。能動的なスティフネスはどのグループにおいても変化はなかった。被験者間およびトレーニング経験間の比較は相互作用を示さなかった。

結論・応用
したがって、アイソメトリックトレーニングの方法はコアスティフネスを向上させるためにはより優れているものであった。これは、コアスティフネスの向上は過重負荷に対する抵抗を向上させ、痛みを発生させる脊柱の微細な動きを阻止し、そして遠位の四肢のバリスティックな動作を向上させるため、これは重要なことである。この結果は、腰部や膝の怪我の発生件数の低下について報告されている効能を説明できるかもしれない。

オリジナルの文献はこちら

 

最初に述べておきたいのが、今回紹介した研究で使用されたコアのトレーニングプログラムは漸進的で様々なエクササイズが含まれています。例えば、アイソメトリックトレーニングにおいては、プランクやデッドバグなどの初歩的なエクササイズからパロフプレスのバリエーションやスーツケースホールド、そしてウッドチョップやStir the potなど強度の高いエクササイズへいこうしています。ダイナミックエクササイズにおいても、カールアップやスーパーマンから始まりバックエクステンションやバーベルツイスト、さらにはメディシンボールスローなどのより強度の高いエクササイズへと漸進しています。

さて、コアのダイナミックとアイソメトリックトレーニングを比較した研究はいくつかあり、上肢のパフォーマンス(パンチのバリエーション)(4)やクライミングのパフォーマンス(5)に対する効果を比較しています。これらの研究ではコアのパフォーマンス自体ではなく四肢や動作のパフォーマンスに着目していましたが、どちらの研究でも両方のケースでパフォーマンスが向上しました。

今回紹介した研究ではコアのスティフネスのみに注目し、受動的なスティフネスにおいてはアイソメトリックトレーニングに軍配があがりました。コアスティフネスの向上によって脊柱でより大きな負荷を耐えることができ、また四肢のパフォーマンスも向上にもつながります(4)。また、LeeとMcGill(6)によれば、コアのアイソメトリックトレーニングは即時にコアのスティフネスを向上させることもできると報告しており、高重量でトレーニングを行う前やスポーツの前のウォームアップとしても活用できるかもしれません。

 

参考文献
1. Willson, J.D., Dougherty, C.P., Ireland, M.L., and Davis, I.M.C. (2005). Core stability and its relationship to lower extremity function and injury. The Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 13, 316–325
2. Willardson, J.M. (2007). Core stability training: Applications to sports conditioning programs. Journal of Strength and Conditioning Research 21, 979–985.
3. McGill, S. (2006). Ultimate Back Fitness and Performance, Third Edition. Backfitpro Inc.
4. Lee, B., and McGill, S. (2017). The effect of core training on distal limb performance during ballistic strike manoeuvres. Journal of Sports Sciences 35, 1768–1780
5. Saeterbakken, A.H., Loken, E., Scott, S., Hermans, E., Vereide, V.A., and Andersen, V. (2018). Effects of ten weeks dynamic or isometric core training on climbing performance among highly trained climbers. PLoS ONE 13
6. Lee, B., and McGill, S. (2017). The effect of short-term isometric training on core/torso stiffness. Journal of Sports Sciences 35, 1724–1733