HPCスタッフコラム

2020.12.09

パフォーマンス向上のためのインターバルトレーニング実施例

画像

近年注目されているピリオダイゼーションの一つにブロックピリオダイゼーション(BP)があります。BPはIssurinによって提唱されたピリオダイゼーションです(1)。蓄積期、移行期、発現期のメゾサイクルの順で構築され、さらに各期間は2~4週間のコンパクトなマイクロサイクルに分かれます。従来のピリオダイゼーションとは異なり、これらのマイクロサイクルでは基礎的な体力要素(筋力、パワー、有酸素持久力など)から順に1~2つの体力要素の向上を目的とし、その要素に対して集中的に刺激を与えます。トレーニングの残存効果を利用しながら大会やシーズンに向けて基礎的な体力要素からスポーツに特異的な体力要素(スピードやアジリティなど)へと移行させパフォーマンスを向上させていくのです。

今回のレビュー論文で紹介されている高強度インターバルトレーニングのショックマイクロサイクルとは、ブロックピリオダイゼーションにおいて高強度インターバルトレーニングに集中したマイクロサイクルのことを指します。このマイクロサイクルでは高強度インターバルトレーニングを集中して行うことで持久系の適応を促すための大きな刺激を身体に与えることを目的としています。

このコラムでは、このレビュー論文から現場への応用の部分を抜粋して紹介します。

 

High-intensity interval training shock microcycle for enhancing sport performance: A brief review.
スポーツパフォーマンス向上のための高強度インターバルトレーニングのショックマイクロサイクル:簡潔なレビュー

Dolci, F, Kilding, AE, Chivers, P, Piggott, B, and Hart, NH. 

J Strength Cond Res 34(4): 1188–1196, 2020

スポーツ現場への応用
HIITSMは、アスリートにおいて持久系のパラメーターとパフォーマンスを急速に向上させるために実行可能な方法であると思われる。このレビューから、HIITSMの方法と効果を最適化するために、ストレングス&コンディショニングコーチは、7日間から21日間の範囲の間に最低でも3日ごとに2回のHIITセッションを組み込むことを考慮するべきである。具体的に、チームスポーツのアスリートにHIITSMを計画しているストレングス&コンディショニングコーチは12日間のHIITSMとその直後に約6日間のリカバリーを設けることによってより良い向上を期待するべきである。より多くのトレーニング負荷を許容できることが考えられる多くのトレーニング経験のある持久系のアスリートをトレーニングする場合は、ストレングス&コンディショニングコーチはより強度の高いHIITSM(4日ごとに5回のHIITセッションを10日間よりも短い期間で)を行うことも考慮することもでき、何故なら、同様のトレーニングプロトコルがこれらのアスリートのカテゴリーに対して効果的・持続可能であり、3~5日の短いリカバリー期間の後にパフォーマンスが向上したとの報告もされている。同様に、HIITSM期間中の1セッションのHIITにおける量と強度はアスリートの経歴やレベルによってうまく合わせるべきであり、長距離走やトレーニング経験の多い持久系アスリートは、チームスポーツやトレーニング経験の少ないアスリートよりも、より強度の高い方法を維持できる可能性が高いであろう。

ストレングス&コンディショニングコーチは、過度な刺激の積み重ねを制限し、けがのリスクの可能性を減少させるために、副次的および補足的な神経筋的、そして神経力学的なストレス(例:関節のオーバーユースや特定の筋損傷など)に応じてHIITのトレーニング方法を調整することを考慮するべきである。最後に、アスリートの経歴にかかわらず、ストレングス&コンディショニングコーチは、トレーニング負荷/ストレスが大きく増加するこの期間において、アスリートの心理・身体的な状態を注意深くチェックするべきである。アスリートはオーバーリーチングの兆候を予期するべきであるが、コーチはアスリートの適切なパフォーマンスと健康を守るためにHIITSMのリカバリー期間中に蓄積された疲労が減少するようにしなければならない。

オリジナルの文献の全文はこちら

 

一般的なインターバルトレーニングセッションの例は図1を参照してください(本文より改変して作成)。


図1.一般的なインターバルトレーニングのプログラム例

このレビューに含まれた多くの研究では、HIITsmによって最大酸素摂取量(VO2Max)や乳酸閾値などの生理的なパラメーターの発達や間欠性やタイムトライアルのパフォーマンスの向上が報告されています。

最後に、HIITsmを実施するうえで重要なのが、短い期間に強度の高いトレーニングセッションを行うため、HIIT期間終了後にリカバリー期間を必ず設けることでしょう。これによってオーバートレーニングを予防するだけでなく、この期間には身体の機能の回復や向上が起こり、エネルギー源の再貯蔵も行うことができます。

 

参考文献
1. Issurin, V. (2008). Block periodization versus traditional training theory: A review. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness 48, 65–75