HPCスタッフコラム

2020.11.06

フォームローラーの効果的な使用方法

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フォームローラーの使用はSelf-Myofascial Release(SMR:自身での筋膜のリリース)の一種であり、以前にもこのコラムでフォームローラーを用いた研究を紹介しました(こちら)。フォームローラーの使用によって可動域(ROM)の向上など様々な効果が多くの研究によって報告されています(3)。同じようにROMを改善させる効果のあるスタティック(静的)ストレッチでは長時間(45~60秒以上)のストレッチによって最大筋力にマイナスの効果が出ると報告されています(1、2)。そのためか、スポーツの現場ではスタティックストレッチに変わってフォームローラーを使用しているところを目にすることが増えてきました。

今回紹介するレビュー文献は、フォームローラーを使用した研究をまとめ、可動域やパフォーマンスの向上に対するフォームローラーの最適な処方量を検証しています。

 

Foam rolling prescription: a clinical commentary.
フォームローラーの処方:臨床的解説

Behm, DG, Alizadeh, S, Hadjizadeh Anvar, S, Mahmoud, MMI, Ramsay, E, Hanlon, C, and Cheatham, S.

J Strength Cond Res 34(11): 3301–3308, 2020

目的
フォームローラーやローラーマッサージの文献は一般的に可動域(ROM)とともに微細または少量のパフォーマンスの向上の急性的な向上を報告しているが、適切なフォームローラーの使用の処方に関する情報は少ない。この文献レビューの目的は、エビデンスを評価しROMやパフォーマンスを向上させるためのローラーの使用方法の最適な処方を提案することである。

方法
この提案は、ROMとパフォーマンスの向上の最も大きな効果量を示した研究を象徴します。PubMed、ScienceDirect、Web of ScienceそしてGoogle Scholarからのローラーの使用に関する文献の体系的な検索をfoam rolling、roller massage、ROM、flexibility、performanceなどの関連した用語を用いて行った。ROM(25件)、筋力(41)、跳躍(41)、疲労(67)そしてスプリント(62)の変数を評価した研究による数値から、回帰相関および予測二次方程式をローラー使用のセット数、回数、セットの持続時間、および強度を定式化した。

結果
分析によって以下の結論が明らかになった。最大のROMを獲得するためのローラー使用の処方量が回帰式によって2~4秒の持続時間(ある身体の部位の全長を1方向に1度動かすための時間)で1~3セット、総持続時間でセットにつき30秒~120秒と予測された。少数のパフォーマンスに関する数値を踏まえると、筋力と跳躍の数値においては概して微細または少量の減少が見られた。さらに、疲労やスプリントの数値に及ぼすローラー使用の影響を概括するためにはエビデンスが不十分であった。

結論・応用
要約すると、比較的少ないボリュームのローラー使用でROMを向上することができ、筋力とパフォーマンスへの影響は概して微細または少量であった。

オリジナルの文献はこちら

 

検証結果の解説となりますが、可動域の向上を目的としたフォームローラーの使用は次のような条件が最適であると示されました。
・セット数:1~3セット(効果量(ES):0.84~1.1)。4セット以上は効果量が減少(ES:0.71~0.056)
・セット当たりの持続時間:30秒~120秒(ES:1.01~1.19)。300秒では効果量が小さくなる(ES:0.29)
・ローラーのスピード(部位の全長において1方向に動かす際にかける時間):2秒~4秒(ES:1.00~1.85)。1秒だと効果量が減少(ES:0.417)

筋力や跳躍のパフォーマンスに対してはその効果量は非常に小さく、フォームローラーの使用による影響は示されませんでした。またこの影響は長時間(60秒)の使用でも同様であり、これはスタティックストレッチとは異なる点でした。疲労やスプリントに対する効果も同様に認められませんでした。

フォームローラーの使用は可動域の向上に有効な手段であり、スポーツやトレーニングの前に適切な処方量で行うことでパフォーマンスを低下させることなく可動域を広げることができるでしょう。

 

参考文献
1. Kay, A.D., and Blazevich, A.J. (2012). Effect of acute static stretch on maximal muscle performance: A systematic review. Medicine and Science in Sports and Exercise 44, 154–164
2. Simic, L., Sarabon, N., and Markovic, G. (2013). Does pre-exercise static stretching inhibit maximal muscular performance? A meta-analytical review. Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports 23, 131–148
3. Wiewelhove, T., Döweling, A., Schneider, C., Hottenrott, L., Meyer, T., Kellmann, M., Pfeiffer, M., and Ferrauti, A. (2019). A meta-analysis of the effects of foam rolling on performance and recovery. Frontiers in Physiology 10